納豆の起源は秋田説と茨城説がある。時は後三年の役(1083年)で源義家軍のために馬糧として提供された煮豆を藁で包んだ物が糸を引いて香ばしかったので人間が食べてみたというのは共通である。ヤマダフーズの「義家納豆」は藁による天然発酵の風味を再現した物であるらしい。
鼻を近づけてみると藁越しにも納豆の匂いを感じる。これを美味しそうと感じたのであるから千年前に馬糧の管理をしていた兵士の臭覚は優秀である。俺なら腐らしちまった責任を取らされるのを恐れてそのまま逐電してたと思う。藁を割くと大粒の大豆が現れる。一粒一粒しっかりしており、硬くまとまっている。表面に糸が引いているがネバネバというよりは少し乾燥している風である。
お皿に移してみる。大豆を直接藁でくるんで発酵させているので、納豆に少し藁がくっついてしまっている。このあたりが馬糧を起源だとする所以かな? ギュッと硬めに藁で包むようで、箸で少しほぐしてから室温になるまで置いておくと納豆らしい香りが一層立ってくる。糸は最初力強く、混ぜている箸への抵抗を感じる。そのうちに細くなり、軽くなってくると食べ頃か。
まずは何も薬味を足さずに一口。煮豆よりもしっかりした食感が残っている。納豆というよりは大粒の大豆そのものを食べている感じ。大豆の種類のせいだろうか、豆そのものの甘味は控えめ。その分口の中で広がる納豆の香りが楽しみやすいように感じた。薬味にネギとゴマ、からしを加えて、3年熟成の再仕込み醤油を少々加えて混ぜる。平成時代の納豆としては発酵・熟成が足りないので味に深みがないかなというのが正直な感想。
でも、千年前に源義家が食べてその美味なるに驚き将兵一同に分け与えたという味がこれに近いと言われると、なるほどそういうものかと納得するしかない。ところで、源義家は納豆をかき混ぜて食べたんだろうか? それ以前に馬の飼料を総大将の食膳に上げるなんてこと……本当にできたんだろうか? 納豆という語句は、11世紀半ばに書かれた書物に登場しているので、その起源が後三年の役のころだったとしもはおかしくはない。
著者: へた釣り