いくつかのチーズは形に意味がある。バレンタインのときに買ってもらえたハート型のヌーシャテルがそうだ。欧州では幸福もたらすとされている馬蹄を象った「バラカ」というチーズもこの形で丸々手に入れて味わわないともったいない。安く買えるのを待っていたらやっと機会が訪れた。
バラカはスーパーのチーズ売場でもよく置かれているため、目にしたことがある人は多いはずだ。フランスはブルゴーニュ地方で作られているダブルクレーム(乳脂肪量70%)タイプの白カビチーズで、幸福を運んでくるようにとの願いを込めて贈り物にされることが多いそうだ。その味が日本人の口に合ったのか、それとも形がウケたのか、フランスでよりも日本での方が人気らしい。1個200グラムで2000円くらいする。安く買えないかなぁと狙っていたら賞味期限間近の物を50%オフで買えた。熟成の手間も省けてラッキー!
箱から出してBarakaと書かれた金色の紙を剥がすと熟成が進んで茶色くなった部分も一部あるが、きれいでキメの細かい白カビの表皮が現れる。表皮を押してみるとまだ少し硬かったので熟成不足かなと思いつつナイフを入れてみると面白い熟成の仕方をするチーズだと驚くことになる。普通白カビチーズは表皮と生地の境目部分からトロトロに熟成していき、中央部の熟成が一番遅れるのだが、バラカは中央部からトロトロになっていくようだ。こういう熟成の進み方は初めて見た。
切り口からはミルクの香りが立つ。ダブルクリームのチーズらしい、まるでバターを舐めているかのような濃厚な味わい。塩味は少し強めで、くどすぎるくらい濃厚な味をいくらか緩和してくれている感じ。表皮にはほぼ味はなく、ほんの少しだけピリッとした刺激をもたらせてくれる。クセ者感はあまりなく、それでいて分かりやすくミルクの味を凝縮してあるので、その辺りも日本でウケる理由かな?
著者: へた釣り