東京で不味いとまでは言わないがあまり美味しくない納豆を食べたいなら大メーカーが大量生産している納豆を買えばいい。逆に名も知らぬ生産者の物でも輸送コストをかけてわざわざ東京まで運ばれてくる納豆にハズレはない。なぜか入手できた鳥取県の納豆2種も法則通りに美味。
鳥取県の納豆と言われても、山陰地方にも納豆を食べる文化があったのね?ってほどに縁もなく認知もしていなかったのだが、未知の納豆との出会いに飢えている納豆道楽者としては、見つけた以上は買わねばなるまい。「三朝神倉納豆 神のつぶ」は新橋にあるとっとり・おかやま新橋館で見つけた。「だいせん納豆」は近くのスーパーの納豆売場にある日突然現れて、翌日には姿を消していた一期一会になる気がする納豆だ。心して食おうと思う。
三朝温泉には子供のころ家族旅行で行ったことがある。鳥取県中央部の山の中、川の両岸に温泉街が広がっていたと記憶している。出雲風土記にも登場した三朝温泉よりさらに山奥、神倉の(神がおられる)集落で古くから作り続けられてきたのが三朝神倉という大豆。納豆1パック(40グラム)に入っている粒の数なら数えられちゃうんじゃってほどに大粒で、うっすらと白い糸をまとってつややか。もっちりと煮られており大豆の甘味をしっかり味わえる一方で、苦みはほとんど感じない。西日本の納豆もこれまでいくつか食べたが、一二を争う美味しさではないかと思う。値段も手ごろだったので見つけたらまた買いたい。
鳥取県の名産といえば砂丘らっきょに梨の二十世紀がすぐに思いつくが、酒飲みとしては大山地鶏を3つ目にあげておきたい。風光明媚で自然豊かな大山は鶏だけでなく、大豆の産地でもあるようで、大山産の大豆だけを利用して作られているのが「だいせん納豆」。その製法に特徴があるようで氷温熟成されているのがウリみたい。アミノ酸やグルタミン酸などの旨味成分が増すという氷温熟成のおかげかあるいは大山産大豆がこういう味なのか、中粒の豆は甘味がとにかく濃厚だ。糸引きは力強く混ぜる箸が重くなるほど。タレ、からしは付いてないのでお好みで。タレで伸ばした方が食べやすい気がする。
著者: へた釣り