糖質は悪? そうは思わない。採集や狩猟を中心とした生活から、穀物を育てる農耕を中心とした生活を1万年前に始めたことで、人類は爆発的に進歩した。エネルギーとなる穀物(糖質)を安定して得られるようになったことで繁栄し文明を築いた。1万年を経てメタボと糖尿病に襲われた。
「糖代謝からケトン体回路へ」で、糖代謝、糖新生、ケトン体の3つのエネルギー回路の説明をしたときに、現代では、糖代謝が基本で、糖新生、ケトン体は非常用のエネルギー回路で糖代謝回路を遮断して始めて効率よく働くようになると書いた。穀物を簡単に手に入れられ、糖質の過剰摂取が可能な現代では人間の体はそうなってしまっている。このことがメタボや糖尿病などの生活習慣病の原因になっているので、糖質オフの話を書くとき、どうしても糖質は悪というニュアンスを含むことになる。
人類の発生は700万年前と言われている。そのうち699万年の間、人類は、採集、狩猟、漁によってエネルギーを得ていた。穀物なしで、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンなどの人間の身体機能を維持するために必要なエネルギーを得ていたことになる。ケトン体がエネルギー回路のメインシステムであり、糖代謝はごく微量の糖質を摂取できたときに補助的に動く回路であったと思われる。農耕が行われたのは700万年の歴史の中でわずか1万年だけ、さらに糖質を過剰摂取可能な飽食状態は150年以下(コカコーラの発売が1886年)に過ぎない。人間の体は糖質を大量摂取できるように進化できていない。
進化できてない体で、無軌道に糖質を摂取し続けた結果が、肥満であり、糖尿病であり、心筋梗塞であり、脳卒中であり…癌まで糖質のせいで増殖する説まで。糖質オフでダイエットや生活習慣の改善ができたあとも、糖質とは上手な付き合い方をしていく必要がある。メタボや血糖値の改善のために始めた糖質オフだが、目先の状況が改善したから終わりではなく、一生続けて行くものだと思うようになっている。コカコーラの瓶はわずか129年で随分とスマートになったが、人間は……。
著者: へた釣り