卵はコレステロールの塊で、コレステロールは動脈硬化をもたらす健康に悪い物。糖質オフ生活は卵へのそんな風評被害と戦うことから始まった。食事を作ってくれる妻1号も卵は1日2個まで派。卵こそが糖質とビタミンC以外の栄養素をバランスよく含む完全食と説得し続けることになる。
説得し続けた結果、どうなったかというと、「そんなに食べたいんなら、好きなだけ食べて死ねば!」ということになったので、卵を好きなだけ食べて長生きすることにした。卵=悪という刷り込みの頑強さに驚く。そもそもコレステロールが動脈硬化の原因であるとする根拠になっている実験は、人間ではなくウサギで行われた物。しかも実験が行われたのが1913年のロシアで。草食動物のウサギにコレステロールたっぷりのエサを与えて、ほら具合が悪くなったよね、コレステロールは体に悪い!!と結論づけたというのであるから驚く。100年前の実験とはいえ無茶苦茶である。
血液検査をすると、コレステロールには2種類あることが分かる。HDL-コレステロールとLDL-コレステロール、前者が善玉コレステロール、後者は悪玉コレステロールと呼ばれる。悪玉ってくらいだからよほど体に悪い物だろうと思いがちだが、肝臓から新しいコレステロールを全身の細胞に運んで細胞膜や神経細胞の原料となっているのがLDL-コレステロール。一方のHDL-コレステロールは古くなったコレステロールを全身から回収して肝臓に戻す。実際はHDLとLDL、もちろん善玉と悪玉に区別する必要はなく、日本脂質栄養学会の「長寿のためのコレステロールガイドライン」にもLDL-コレステロールと動脈硬化などの死因には因果関係はなく、LDL-コレステロール値が高い方がむしろ長生きの傾向になるという調査結果が掲載されている。
体内でのコレステロールの働きは5つある。
1.細胞膜を生成する材料となる
2.脳や神経細胞の材料となる
3.男性ホルモン、女性ホルモンなどの材料となる
4.脂肪の分解な必要な胆汁酸の原料となる
5.骨を丈夫にするビタミンKの原料となる
LDL-コレステロールが動脈硬化の原因とされた理由は、実は1で説明がつく。血管で炎症が起きると、LDL-コレステロールが細胞を修復しようと働く。炎症が続くとその部分に炎症→修復が繰り返され、結局カサブタ(プラーク)となって血管を詰まらせてしまう。炎症によって痛んだ血管を修復しようとするLDL-コレステロールが頑張りすぎたってこと。問題は炎症であってLDL-コレステロールではない。
卵に話を戻すと、長寿のためのコレステロールガイドライン2010年版の要旨にも、「コレステロール摂取量を増やしても血清コレステロール値は上がらない」とはっきり書いてある。さらに「“高リノール酸植物油の摂取を増やし動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らす”という従来の栄養指導は、むしろ心疾患、癌などを増やす危険性が極めて高く、これを勧めない」と、コレステロール=悪説を珍しいほどに素直に取り下げているだけでなく、サラダ油=悪玉説を唱えている。それが可能であったのは「編集委員のほとんどが製薬会社から研究費などをもらっていないからである」らしい(ここ、笑うとこ?)。
不当に摂取量を制限されてきた卵=悪説も否定されたわけだ。最後の悪足掻きのように「コレステロールの1日摂取目標量は、成人男性750mg未満、成人女性600mg未満」にと指導されることがある。卵1個のコレステロール量は214mg。ほかの動物性食品にもコレステロールは含まれているので、卵は1日2個までの根拠はこれかな? ただし、最近の研究では卵を3個以上食べた方がインスリン抵抗性が改善されるなどの報告もあり、1日10個でも20個でも食べたいだけ食べても何の問題もなし!!とする医者や研究者も増えてきている。ま、そこまで卵ばかり食いたいわけではないが……。
著者: へた釣り