チーズ道楽では欧州の季節の移ろいを感じることは多いが、日本の季節感にはそぐわないなと感じることも……。季節の風物詩として来年もきっと食べるであろう国産チーズが「さくら」と熟成の進んだ「さくらのアフィネ」。春への期待にさくらを食べ、花を惜しんでアフィネを食べる。
さくらは桜の塩漬けを使った和菓子のように可憐な姿と繊細な味を楽しませてくれる。桜の香りが移った真っ白な生地は口の中に淡い酸味を残して消えていく。咲き誇るのとほぼ同時に散り始める桜の雰囲気を楽しめるチーズであった。そのさくらを1カ月熟成させたのがさくらのアフィネ。販売期間は6月中旬までとあるが、花が散りだし白くはかない花に混じって色鮮やかな緑の葉が芽吹き始めた頃に食べるのがいい。さくらに比べ熟成過程で水分が抜けて一回り小さくなったアフィネ。酸味は消え、クリーミーな生地からはミルクの味が感じられるようになる。桜の葉から移った桜餅のような香りと味は健在だがチーズの味が力強くなった分香りは主役から味を引き立てる脇役へと回った感じかな。葉桜になってしまう前の、はかなさと力強さが混在する桜を愛でて食べるのがいい。
著者: へた釣り