大阪生まれなので関西圏では納豆はよほどの変わり者だけが食べる物と思っていたがこれは誤り。京納豆は納豆の発祥とほぼ同時期に丹波地方を中心に定着したらしい。関西地方の他県の納豆購入頻度は軒並みワースト10にランクインする中、京都府だけ納豆が食べられている。
1083年の後三年の役に奥州に出兵した源義家軍に馬糧として提供された煮豆を藁で包んだ物が発酵し糸引き納豆になった。これを人間が食べてみたら香ばしくもあり美味しかったというのが納豆発祥伝説である。場所は秋田県仙北郡説と茨城県水戸説があるが大まかな話の筋は変わらない。この伝説には続きがある。源義家につき従って戦った兵の多くは京都周辺で集められた者たちで、京に戻ってからも納豆を作り食べ続けた。これが丹波地方に広まり、京納豆として今日まで伝わっているというのである。
確かに京納豆のいくつかは東京でも、それもアンテナショップではなく通常のスーパーなどでも買えることがある。最もよく見かけるのが森口加工食品の牛若納豆。「大粒納豆 ゴールドカップ」という大きなカップに入った物などは安定して入手できる。「ごま塩納豆 京都」などのようにからしとタレではなく、納豆を小鉢料理として成立させようとしているのも京納豆の特徴かな? 大豆本来のおいしさを納豆に加工することによって引き出し、さらに調味料によって美味しさを引き立てる。
京都・鶴の子納豆本舗の「小納豆」もそんな小鉢料理として成立させようとしている納豆の1つで、からしではなく七味家の七味唐辛子が付いてくる。タレも柚子醤油味で非常に面白い味になっている。七味唐辛子は極めて粒子が細かくて納豆を練っているうちに糸の中に混ざり込んでしまう。七味唐辛子はものすごく力強い。それも7つの味がそれぞれ主張する。食べるたびに七味のどれが多く入っている部分に当たるかによって、納豆の味が変わるのである。味チェンジがランダムに行われているわけで次の一口を食べるのが楽しみになる。納豆の薬味に上等な七味唐辛子はありだ!
著者: へた釣り