チーズが主役かワインが主役かというと個人的にはチーズが主役でワインが脇役。主役(チーズ)の存在感や美味しさが引き立つ脇役(ワイン)を上手に選べるようになりたいと望んでいるのだが……この日は失敗した。しまった! 今日はスパークリングだった!!とちょっぴり後悔したよ。
さわやかな酸味のあるチーズにはスパークリングが合うと思う。そう思っていたのにこのチーズの組み合わせを見て、スパークリングワインを選べなかったのだから修行が足りんなぁっと。サント・モールは山羊乳から作られていると知っていたし、サン・マルスランも酸味のあるチーズだってことを知っていた。カヴァのストックも1本あったのに……それを選べなかったことがすごく残念。そういう悔しい思いをしながら少しずつ進歩していくんだと信じたい。
暦の上では立春を過ぎたら春なわけだが実際は1年のうちで一番寒い時期である。このセットを作った人は春を先取りしてねって考えてくれたのかな?と想像(妄想?)すると、なんだか楽しくなる。山羊乳チーズの酸味は苦手という人もいるが、それさえ克服できれば山羊乳チーズにハズレなし。
1.サント・モール・ブラン
フランス 山羊乳 シェーブル
円筒状に型を整え中央に藁を1本通すとこまでは同じ作り方だが、トゥーレーヌが木炭をまぶして熟成されるのに対して、ブランはそのまま熟成される。その違いが味にはっきり表れるのだから面白い。ブランは山羊乳の酸味が強くフレッシュな味わいの春のさわやかさを表現したかのようなチーズ。もう少し熟成させても面白いそう。
2.カレ・ブラッスール
フランス 牛乳 ウォッシュ
カレなので正方形のチーズだ。フランス東部のアルザス地方で作られることが多い。ブラッスールはこの地方で作られるホップの香り豊かな白ビールで表面が洗われたウォッシュチーズだ。表皮の香りは強めだが、表皮を剥げば生地はなめらかな食感でどちらかというと大人しい。ミルクの甘みとコクをしっかりと味わうことができる。
3.サント・モール・ド・トゥーレーヌ・ドゥミ・アフィネ
フランス 山羊乳 シェーブル
藁が通った円筒形のチーズ。「ドゥミ・アフィネ」はほどよく熟成させたという意味。表面の木炭と生地の間が少しトロトロになっていた。若い物に感じた酸味はなくなっており、代わりに山羊乳の味が濃縮されクリーミーさが増す。香りも熟成が進むとナッティーになり、チーズの熟成とはこういうことかっ!と驚かせてくれる。
4.フルム・ダンベール
フランス 牛乳 青カビ
ロックフォールと並ぶフランスを代表する青カビチーズだ。ロックフォールが羊乳から作られるのに対して、こちらは牛乳から作られる。生地に広がる青カビは多めで、刺激をしっかりと味わえる。ピリッとした刺激のあとに牛乳の穏やかな甘みが口の中に広がる。崩れにくいのでサラダに入れたりハチミツに絡めたりしても楽しめる。
5.ペコリーノ・トスカーノ
イタリア 羊乳 セミハード・ハード
ペコリーノはイタリア語で羊乳で作られたチーズのこと。トスカーノはワインやオリーブの産地として知られるトスカーナ地方のこと。やや白っぽい生地は羊乳らしい甘みと酸味があり、口の中で溶けるのを楽しんでいると、ミルクのコクが少し遅れてやってくる。塩味は以前食べたことのあるペコリーノ・ロマーノに比べると格段に穏やか。
6.スプリンツ・ブロック
スイス 牛乳 セミハード・ハード
ヨーロッパ最古のチーズの1つとされているのがスプリンツ。短くても1.5年、長いものでは3年熟成されているので水分が抜けてかなり硬く濃厚な味わい。カンナのような専用のスライサーで薄く削って食べられることが多い。さわやかな甘味があって食べやすいチーズで、ミルクの旨味が結晶化したコリコリとした食感が混ざる。
7.サン・マルスラン
フランス 牛乳 フレッシュ
さわやかな酸味と優しいミルクの甘みがふわりと口の中に広がる癖になるチーズだ。表面は白カビに覆われ白い生地はキメ細やかで表皮に近い部分は少しトロリとなっていた。ルイ11世のお気に入りのチーズとして知られるサン・マルスランは、かつては山羊乳で作られていたそうなのでもっと酸味が強かったのだと想像される。
著者: へた釣り