お正月に不摂生が過ぎたから猛省したはずなのに、舌の根も乾かぬうちに贅沢かつ太るぞぉ~な組み合わせを楽しんでしまった。白トリュフが練り込まれたイタリアのチーズが想像以上の香りと美味しさで赤ワインとの相性まで抜群。2017年もチーズ&ワイン道楽は止められない止まらない。
トリュフなんてもともとは好きでも嫌いでもなかった。ところがである。チーズの中にトリュフが練り込まれている物を食べてみると、ときどき物凄い爆発力のある美味しさを発揮することに気付いた。チーズとトリュフの香りのせめぎ合いが面白い。ブリ・ド・モー+トリュフクリームは絶品だったし、ブリア・サヴァラン+トリュフクリームの贅沢な競演は至福だった。マンスティールとトリュフクリームの香りの対決は面白かった。この3つを超えたのでは?と思うのが今回食べたモリテルノ・アル・タルトゥーフォ・ビアンコだ。白トリュフとペコリーノ、そして黒系果実のアロマを纏ったCH モンペラ ルージュ 2014。道楽者冥利に尽きる組み合わせだった。
今回は羊乳のチーズが大当たりだった。羊乳は牛乳に比べて固形分が多く、飲むのには適さないが、固形分が多く濃厚ということは牛乳よりもチーズ作りに適している。同じ分量のミルクから3倍の量のチーズが作れるというだけでなく、羊乳の特徴である甘さとコクの強さがチーズにしっかりと伝わる。羊乳のチーズは赤ワインと相性がよいのではと感じている。
1.コルシカ
フランス 羊乳 ブルビ
コルシカ島には人口の5倍の羊が飼われておりチーズの生産が盛ん。そんな島の名前がそのまま製品名になっている。羊乳らしい優しい甘さとミルキーさがあり、香りも強い。表面はキメの細かい白カビに覆われているが、こちらは無味無臭。白カビチーズ同様、熟成が進み、生地がドロリと蕩けてきたら食べ頃みたいだ。
2.クロミエ・レ・クリュ
フランス 牛乳 白カビ
フランスを代表する白カビチーズがブリ。特に美味しいとされるブリ三兄弟の末っ子がクロミエ。クロミエはAOCを取得していないのでバリエーション豊富だが、無殺菌乳から作られるレ・クリュは超ミルキー&コクがあり、無殺菌乳らしい苦みやクセ、マッシュルームのような白カビの外皮まで白カビチーズの醍醐味を楽しめる。
3.ヴィニョロン・マール・ド・ミュスカ
フランス 牛乳 ウォッシュ
ウォシュチーズはその表皮が臭ければ臭いほどいい…とは思わないが、臭い方がなんとなく期待感が高まる。アルザスのマール・ド・ミュスカという蒸留酒で洗われ熟成されたこのチーズの湿りを帯びたオレンジ色の表皮の香りは強烈だった。皮を剥げば鼻に抜ける洋酒のコクのある香りともっちり生地のミルキーさを楽しめる。
4.ケソ・テティージャ
スペイン 牛乳 セミハード・ハード
尼さんのおっぱいなるなんとも艶めかしい愛称で呼ばれているチーズ。なだらかな円錐型をしているのがその所以だが、食べてみるとそれだけではない気が…。水分が抜けて硬くなってきている外側に対して、内部の生地はむっちりとしており、弾力のあるおっぱいの感触に似る。口の中で蕩け優しいミルクの味が広がり至福。
5.スプリンツ・ブロック
スイス 牛乳 セミハード・ハード
ヨーロッパ最古のチーズの1つとされているのがスプリンツ。短くても1.5年、長いものでは3年熟成されているので水分が抜けてかなり硬く濃厚な味わい。カンナのような専用のスライサーで薄く削って食べられることが多い。さわやかな甘味があって食べやすいチーズで、ミルクの旨味が結晶化したコリコリとした食感が混ざる。
6.ブルー・ド・ジェックス
フランス 牛乳 青カビ
黄みがかった生地にマーブル状にきれいに広がる青カビ。甘みと塩、苦みが絶妙なバランスとタイミングで口の中に訪れる青カビチーズはこうでなくっちゃという絶妙なバランスだ。香りも豊かだ。13世紀頃から作られてる歴史のあるチーズで日本を代表する青カビチーズである二世古 空[ku:]はこのチーズをお手本に作られている。
7.モリテルノ・アル・タルトゥーフォ・ビアンコ
イタリア 羊乳 セミハード・ハード
イタリアの北部ピエモンテ州で羊乳から作られるペコリーノにトリュフを5%以上練り込んであるというなんとも贅沢なチーズ。ビアンコはトリュフはトリュフでも白トリュフが使われているというのであるからたまらない。濃厚なトリュフの香りが口の中いっぱいに広がり、遅れて羊乳の甘みとコクが訪れる。赤ワインの最強のお供。
著者: へた釣り