月に一度、実家の用事のために大阪に行くようになった。「時間に余裕ができたら明石まで釣りに行こうと考えてるんだ」と話すと、いきなり「明石行ってええもん食べよ」ときた。「明石まで」「行こう」という望み通りではあるが、肝心の「釣りに」は聞こえなかったようだ……都合のいい耳だ。
「ええもん食べに行こう」の具体的なプランを考えるのはへた釣りの仕事である。明石の海の幸が食べられて、温泉にも入れるという条件で絞りこんでいくと、実はあまり選択肢は多くなかった。選んだ宿は人丸花壇という料亭旅館。明石海峡の名物である鯛・蛸・穴子を満喫できる明石会席プランを申し込んだ。宿の外観は格式と歴史ありな感じ。明石の温泉は少し温度はぬるめでゆったりと入ることができる。鉄分、塩分を多く含むようで、酸化するとお湯の色はほんのりと金色に濁り、なめると塩辛い。お風呂をのんびり楽しんだら部屋食で夕食を楽しむことができる。
まずは先付。面白かったのはタコの塩辛。イカの塩辛よりも甘みが強く食感がコリコリとしており美味い。続いて海老しんじょうの吸い物が運ばれてくる。お酒は地酒の「特別純米 明石鯛」を頼んだ。甘過ぎず、辛過ぎず、バランスのとれたすっきりとした味わい。食中酒にぴったりの日本酒だった。先付と椀物、そしてお酒で、今日のええもんは大当たり間違いなしと確信できる。
続いて海峡名物3点セットのうち2品がお刺身で運ばれてくる。明石鯛とカンパチ、そしてイカが1つのお皿に、薄く削ぐように造った明石蛸のお刺身が別のお皿に盛られてくる。鯛のお刺身は十分に旨みが引き出してあり、ねっとりとした食感。カンパチとの味の対比が楽しい。蛸のお刺身は梅肉でいただく。コリコリとした歯ごたえと噛んでいるうちに口の中に甘みが広がる。軟体動物を好んで食べないへた釣りが美味いと感じたのであるから相当美味いんだと思う。季節の炊き合わせにも鯛が使われていた。
鯛の宝楽焼きは3人で中型サイズの真鯛の半身を焼いてくれる。大好物の頭肉の部分を食べられた。焼き魚は胸鰭の付け根の部分と頭肉が美味い。明石穴子の天麩羅、酢物と料理は続く。穴子に関しては東京湾の物と比べてどう?と聞かれても答えようがないかも。明石海峡の穴子も、東京湾の穴子も両方抜群に美味い!!
最後は赤出汁と蛸めしで海峡名物でお腹いっぱい。明石のええもん巡りは魚の棚編へと続く。
著者: へた釣り