チーズといえばワインをお供にが定番だが、ウィスキーとも相性がよいと紹介されることがある。味も香りも強いチーズはワインに勝ってしまうことがあるが、ウィスキーならチーズに負けず、隠れていたチーズのフレーバーを引き出してくれることがあるそうだ。ウィスキーなら糖質も0だしね。
ウィスキーなら飲み方を変えるだけでいろんなチーズに合わせられるという利便性がある。香りが強いウォッシュタイプならストレートやロックで、ミルキーなタイプの白カビチーズなら水割りでがいいような気がする。甘みが強いハードチーズも水割りがいい。酸味があるシェーブルやフレッシュチーズはソーダ割りなんてどうだろう。ちょっとチーズを食べたいけれどワインを1本空けるほどには飲めないってときは、ウィスキー×チーズで楽しんじゃおうと思う。
今週のチーズセットの目玉はオッチェッリ・燕麦ウィスキーだ。チーズをウィスキーに浸けこんで酔っぱらいチーズにし、ダメ押しのように表面に燕麦を付けてさらに1カ月熟成させてある。ウィスキーとチーズのフレーバーが喧嘩をせずにうまく引き立て合うってことを実感できるチーズだった。
1.サン・シモン・ダ・コスタ
スペイン 牛乳 セミハード・ハード
とがったおっぱい型チーズを樺の木でスモークしたものだ。ガリシア地方で作られる円錐型のいわうるおっぱいチーズは例外なく日本人の口に合う物が多いが、スモークされたことでさらに日本人好みになっているように感じる。表皮の燻製香と燻製によるほんの少しの苦みとチーズ本来の優しい甘みが絶妙のバランスで並存している。
2.キュレ・ナンテ
フランス 牛乳 ウォッシュ
フランス革命の時代、ロワール河下流の都市・ナントの街に逃れた司祭(キュレ)が造ったと言われている歴史あるチーズ。表皮をゲランド産の塩で洗っているため、納豆のような濃密な香りがする。ふっくらとした生地はミルクのおだやかな甘味が感じられて美味しい。クセはほとんどない食べやすいウォッシュチーズだ。
3.オッチェッリ・燕麦ウィスキー
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
オッチェッリはバローロの搾りかすに浸けて熟成させた物を食べたことがあったが、これはウィスキーに浸けたあとに表面に燕麦を付け更に1カ月熟成させた物。生地にはしっかりとウィスキーが浸みこんでおり、ウィスキーの苦みとチーズの甘みの対比が面白い。香りもウィスキーとチーズが混ざっておりお酒好きなら楽しめる。
4.バラカ
フランス 牛乳 白カビ
欧州では幸福もたらすとされている馬蹄を象ったチーズで、ダブルクレーム(乳脂肪量70%)タイプなので、熟成が進んでトロトロになった生地はバターのような濃厚な味わい。普通の白カビチーズは表皮に近い部分から熟成が進むが馬蹄型という特殊な形のせいなのか、生地の中央部からトロトロになる。クセのない味わいだ。
5.カンタル・アントル・ドゥ
フランス 牛乳 セミハード・ハード
2000年以上の歴史があるという40キロ級の大型のチーズで90日以上熟成された物を「アントル・ドゥ」と呼ぶ。乾いた表皮はゴツゴツと武骨な感じだが、生地はナッティで繊細な味わい。口の中でもろく崩れ濃厚なミルクの香りが広がり、苦みを後味に残して溶けて消えて行く。重口の赤ワインと合いそうなしっかりしたお味。
6.ケソ・デ・バルデオン
スペイン 混乳(牛乳・山羊乳) 青カビ
塩漬けされたカエデの葉に包まれた青カビチーズ。牛乳と山羊乳の混乳から作られるので複雑な味わいがある。ミルクの甘さとコクをしっかり味わえ、青カビのマイルドな刺激がいいアクセントになっている。生地は水分が少なめで少しパサパサした感じで口の中に入れるとパラリとほぐれて味が広がる。塩味はさほど強くない。
7.クロタン・ド・シャヴィニョル・ドゥミ・セックル
フランス 山羊乳 シェーブル
クロタンはあまりうれしくないが馬糞のこと。山羊乳らしい白い生地はボロボロと崩れる感じで酸味があり爽やかな味わい。栗のようなほっくりした生地を口にとどめて楽しんでいると、濃厚なミルクの香りと味をしっかり感じることができる。シャヴィニョル村とその周辺で製造された物はクロタン・ド・シャヴィニョルを名乗れるそうだ。
著者: へた釣り