混雑する土用の丑の日にわざわざ鰻を食べに行くなんて野暮は避けたいが、夏のこの時期なぜか鰻は食いたくなる。2019年の土用の丑の日は7月27日。3週間ほどお先に、恵比寿・う福で鰻三昧を楽しんできた。このお店、恵比寿では最安値で鰻丼を食べられる財布に優しい店でもある。
個性的なお店がひしめく恵比寿横町の表側の入り口横にあるのがう福。滋養強壮と書かれた看板と提灯が目立つ。お昼から開いており昼飲みもできる、うな串と焼き鳥のお店だ。1階は目の前で串が焼けるのを見られるカウンターとテーブル席、2階はテーブル席。入口から中をのぞくとカウンター席は満席になっていても、テーブル席になら案内してもらえることが多い。鰻串は1本290円から。絶滅危惧種のウナギである食べ過ぎないようにいただくのが正しい…と頭では分かってはいたがあまりの美味しさに鰻三昧してしまう。
飲み物は糖質の心配がなく、日本料理の味を邪魔しないと思われる緑茶ハイ。飲み物を頼むとお通し(290円)として茄子の煮びたしが出てきた。注文したのは名物と書かれていたう福焼き(黒)、う巻き、鰻串から白短冊とくりから。柚子味噌やガーリックなどの変わり串もあるがまずは正統派を味わってから。串は焼くのに時間がかかるので、すぐに出てくる枝豆とやみつきキュウリを注文して乾杯する。
まず運ばれてきたのは白短冊とくりからの串。白短冊は串を打った白焼きでワサビで食べる。鰻の脂をほかの味に邪魔されずに楽しむことができる。くりから焼きは蒲焼を作るときに出る切れ端を串に巻いて焼いた物。剣(串)に巻き付いている姿が仏教の倶利迦羅龍王の姿に似ていることからそう呼ばれる。魚は捨てる部分が美味しいことが多い。くりから焼きも脂たっぷり。
続いてう巻き。鰻を食べられるお店でお酒を飲むときは必ず頼む。ふわりと焼きあがった玉子が鰻を包む。そして名物と謳われていたう福焼き(黒)が運ばれてくる。関東風のふっくら仕上げではなく、関西風の、鰻は脂を楽しんで!!というタイプの蒲焼だ。裏ごしした梅干しを付けて食べる。鰻のこってりした脂と甘みのあるタレ、そして梅干しの酸っぱさが口の中で混然一体となって面白い。
50歳を超えた胃袋はこのあたりで十分満たされているはずだが…年に一度しか食べない鰻である。名残惜しくてついつい追加注文をしてしまう。メニューで一番目立つ=お店イチオシの串を頼む。鰻の蒲の穂焼きは筒切りされた鰻串。門外不出の秘技で骨抜きされているそうだ。開いてさばくという調理法が確立される以前、鰻は専ら筒切りにして食べられていた。この食べ方では骨っぽかったせいで下魚扱いされていた。蒲の穂焼きには骨はなく肉厚な鰻を楽しめる。
最後に胃袋の若い同行者が頼んだのが勝手ごはん(150円)+ちょこっと蒲焼き(530円)。この組み合わせで作られるミニ鰻丼が680円で食べられるのもう福の魅力。肝吸い(190円)を追加しても870円。安く飲めるようにお酒のお供は鰻ではなく焼き鳥(170円~)やおつまみ系のメニューだけにして〆だけプチ贅沢してミニ鰻丼という楽しみ方ができる。土用の丑の日が近付き、鰻は食べたいが…何千円もかけたくないという人にはうれしい。
著者: へた釣り