ワインや日本酒、焼酎などもそうだがチーズも嗜好品だとつくづく思う。未知の銘柄に出会うとワクワクしながら手に取る。予想通りの美味しさだったら大満足。期待を超える美味しさだったら超大満足。あまり知られていない好みの味に出会えると最高にうれしいのが嗜好品という物である。
ワインだと安くても1000円。1000円前後のワインはかなりいい確率で外れるので2000円近いワインを買って好みに合うかどうかを試さなくてはいけない。あるいはワインバー(写真は恵比寿・3amours)などでグラス売りされている物で気に入る物を探してからボトルを買う。日本酒や焼酎でもいっしょで、好みのお酒に出会うにはかなりお金がかかる。その点、チーズは罪がない。フェルミエ渋谷店で売られているチーズセットは7種類のチーズが入って2160円。2、3個は未知のチーズが入っていることが多い。あまり名の知られていないチーズで好みの物が見つかると道楽者は大喜びだ。
今回のチーズセットはペキュリ―ヌを目当てに買った。羊乳で作られたウォッシュチーズでトロトロに蕩けてカップに入っていた。もともとコクの強い羊乳がウォッシュになると……予想通りのミルキー感がたまらない。ペコリーノ・サルド・マトゥーロは期待を超えた。こちらも羊乳のチーズだが甘くて美味しいだけでなく野性味あふれる香りに惚れた!! また食べたい。
1.モンテ・ヴェロネーゼ・ラッテ・インテーロ
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
乳の質によってここまでチーズの味が変わるのかと驚いた。レッシーニア・ヴェロネーゼとモンテ・バルドの山間で飼育される乳牛の全乳から作られている。熟成期間は1カ月と短いにも関わらず、ミルクの優しい味とバターのようなコク、もっちりとした食感ともに最高の味わい。複雑さはないが分かりやすくめっちゃ美味い!
2.ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノ
スペイン 山羊乳 セミハード・ハード
ムルシア地方で作られるワインはがっしり骨太で赤というより黒ワイン。度数は18度あるなんてことも。そんなムルシアワインで洗いながら6週間以上熟成された山羊乳のチーズだ。生地の白さと表皮のワイン色との対比が美しい。酸味はほとんど感じられず、ワインのタンニンによって引き立てられたチーズの甘みを強く感じる。
3.フルム・ダンベール
フランス 牛乳 青カビ
ロックフォールと並ぶフランスを代表する青カビチーズだ。ロックフォールが羊乳から作られるのに対して、こちらは牛乳から作られる。生地に広がる青カビは多めで、刺激をしっかりと味わえる。ピリッとした刺激のあとに牛乳の穏やかな甘みが口の中に広がる。崩れにくいのでサラダに入れたりハチミツに絡めたりしても楽しめる。
4.ペキュリ―ヌ
フランス 羊乳 ウォッシュ
ペキュリ―ヌはコルシカ語で羊乳製のチーズのこと。塩はやや強めで、遅れて羊乳らしいコクと甘さを感じる。ウォッシュチーズなのでトロトロミルキーさがより強くなっている上に、香りにも羊乳らしいクセ者感がある。マイルドな味ではあるがこのクセ者感はクセになる。お好きな人にはたまらないチーズの1つなのではないかと。
5.ペコリーノ・サルド・マトゥーロ
イタリア 羊乳 セミハード・ハード
サルデーニャ島で作られる羊乳のチーズでマトゥーロは熟成期間が2カ月以上の物のこと。表面にオリーブオイルを塗って熟成される。塩はやや強くパサシャリとした生地が口の中でほぐれると羊乳の甘さとコクが襲ってくる。と同時に野趣あふれる香りをしっかり感じる。羊乳のチーズは濃厚で美味しいってことを実感できるはずだ。
6.カマンベール・ド・ノルマンディー
フランス 牛乳 白カビ
言わずと知れた白カビチーズの雄。こんなに美味しい物がアルツハイマー病の予防にも効果的となるともう無敵である。無殺菌乳で作られたカマンベール・ド・ノルマンディーのトロトロ熟成も期待を裏切らない。苦みと旨味、クセとミルキーさのせめぎ合いが口の中で巻き起る。熟成が若い殺菌乳のカマンベールとは全くの別物だ。
7.トム・ド・ラカイユ
フランス 牛乳 青カビ
トムなので少し小ぶりのチーズだ。さまざまな色のカビに覆われた生地は少し水分多めで熟成の進んだ白カビチーズのようなトロトロとした食感を楽しめる。ミルクの味は濃厚でバターを舐めているような甘みを感じることができる。青カビの刺激は控えだ。青カビの風味を少し感じるという程度なので食べやすい。
著者: へた釣り