個性的で美味しそうなチーズを探していると、チーズといえばフランスとイタリアが2強で、スイスやオランダがそれに続く生産国だと思い込んでしまうが、チーズの生産量世界一はアメリカで2位はドイツ。3位にようやくフランスで4位がイタリア、5位にオランダ。スイスはベスト10入りせず。
チーズにもお国柄という物が明確にある気がする。アメリカ産のチーズは分かりやすく美味しいってことを追求し大量生産された物が多い。クリームチーズは実はアメリカで誕生した。チーズに生クリームを足してよりミルキーで美味しくしちゃおうという発想はアメリカらしい。ドイツは多くの国と国境を接しているため様々なチーズ文化の影響を受けている。傑作はガボンゾーラではないかと。フランスを代表する白カビチーズにイタリアを代表する青カビチーズを挟みこんでカマンベールとゴルゴンゾーラのキメラを作ろうという発想はドイツ的? 大量生産指向の両国に対してフランスやイタリアは伝統を守って種類の豊富さ、味の多様さで勝負している。
ワインだと旧世界(ヨーロッパ)と新世界(ヨーロッパ以外)と区別されることがある。チーズにもそういう区分あるのかな? チーズ生産量トップ10入りしている国で旧世界以外の国はアメリカ、ロシア、エジプト、アルゼンチン、カナダ。どんなチーズが作られているのかすごく気になる。日本代表はチーカマ? それともチーズの味噌漬け?
1.カドス
フランス 牛乳 白カビ
白カビチーズにカテゴリー分けされているが洋菓子のような特殊なチーズだ。カマンベールの表面にカルヴァドスというブランデーを含ませたパン粉をまぶして熟成させる。洋酒がたっぷり入った洋菓子のような香りがし、カルヴァドスはリンゴ酒(シードル)から作られるので砂糖は使ってなくてもお菓子のような甘さを楽しめる。
2.ル・プティ・アルザシアン
フランス 牛乳 ウォッシュ
もっちりむっちりした生地は優しいミルクの味と甘み。外皮はオレンジ色でウォッシュ特有の匂いは強からず弱からずといった感じ。表皮を剥いでしまえばマイルドで万人向けするチーズだ。個性という点ではやや物足りないが安定の美味さ。ウォッシュチーズ入門のセカンドステップにちょうどいい気がする。赤ワインに合いそう。
3.レティヴァ
スイス 牛乳 セミハード・ハード
北海道に旅行したときに嗅ぎたくなくてもたっぷりと嗅ぐことになる牧草の香り。それに似た香りをたっぷりと纏ったチーズだ。甘みと苦みが濃厚に感じられて面白い!!というのが正直な感想。スイスの標高1000メートル以上の放牧地で銅鍋を使った伝統的な製法で作られている。生産後に厳しい基準をクリアして出荷されるそうだ。
4.ルブロション・ド・サヴォワ
フランス 牛乳 セミハード・ハード
ルブロションは「再び搾る」という意味で、地主が搾乳量をチェックしたあとにこっそり搾った乳で作られたという由来を持つ。優しいミルクの味を楽しめるチーズだ。塩水で表面を洗われながらエピセアの棚に置かれ熟成が進んだ物は木の実のような香りがする。外側がオレンジ色、内側は白い粉を吹いたようなケーキのような外観。
5.シュロップシャー・ブルー
イギリス 牛乳 青カビ
黄色の生地に大理石様に広がる青カビなのでスティルトン系のモダンイブリティッシュチーズだ。この手のチーズはスティルトンよりクセ物感が控えめになっていて食べやすくなっていることが多いが予想通りの味だった。少し水分が多めの生地は甘く力強い。塩味は少し抑えめで青カビの刺激はほどよい感じでマイルド。
6.シュブロ
フランス 山羊乳 シェーブル
無殺菌の山羊乳から作られたチーズのクセ者感と美味しさにすっかりハマっているが、シュヴロも無殺菌乳を手作業で型入れして作られる伝統的な製法で作られる。真っ白でキメの細かい生地はしっとりとした食感で酸味がしっかり感じられる。熟成が若めだったので表皮と生地との間のトロトロな部分は少なめだった。
7.エーデルピルツ・ケーゼ
ドイツ 牛乳 青カビ
生真面目なドイツ人が誰にでも親しめる青カビチーズを作ってやろうと緻密な計算をして作りあげたチーズのように感じる。生地に均等に広がる青カビ、塩味、ミルクの甘み、そして青カビの刺激のバランスが超優等生的。青カビチーズはどうも苦手と思っている人は試してみる価値はある。中庸的で面白味には欠けるけど…。
著者: へた釣り