子供のころからかなりの偏食だった。食べたくない物が多く、今では体罰に当たるのだろうが全部食べるまで許してもらえない給食の時間は小学校で一番の苦痛だった。大人になっても偏食のままだったが食生活を見直すうちに少しずつ偏食が治っている。牛乳ももともと大嫌いだった。
牛乳嫌いが毎週チーズだチーズだと騒いでいるのだから、昔の自分が今の自分をみたら狂ったんじゃないかと思う気がする。牛乳嫌いの理由の1つが獣の生臭さを感じさせるあの臭いだった。目をつむって息を止めて一気に飲み干していたのを思い出す。それがミルクの芳醇な香りが云々なんてチーズの感想を書いている。さらに牛乳よりも味にクセのある羊乳、山羊乳だって平気なのだがら、道楽すると食べないと損した気分になって好き嫌いがどんどんなくなっていく。あれほど毛嫌いしていた納豆も食べられるようになったし、嫌いだった物の方がその反動でハマるのかも?
羊乳がいっぱい入っているから選んだわけではないが、食べたことがないチーズを求めてセットを選ぶと、羊乳から作られたチーズが7種類中4つも入っているという偏りを見せた。ケソ・マンチェゴはスペインを代表する羊乳製チーズだが、今回食べた伝統的な製法で作られた物は味も香りも濃厚でビックリしたよ。
1.ブリナータ
イタリア 羊乳 白カビ
ブリナータはイタリア語で「霜がおりる」という意味で、その名の通り真っ白できれいな白カビに覆われている。モッッアレラにも似たモキュっとした食感の生地はほんのり甘く羊乳らしい上品なミルクのコクを味わえる。塩味はほとんどないので子供のオヤツなどにも最高のチーズだ。熟成させると茶色くなり、コクも増すらしい。
2.オベハ・アル・ロメロ
スペイン 羊乳 セミハード・ハード
オベハはスぺイン語で羊乳の意味、ロメロはローズマリーのこと。羊乳で作ったチーズの周りにびっしりとローズマリーをまぶして3カ月間熟成させたチーズだ。ローズマリーの味と香りが生地にも浸透しており、爽やかな味わいに草木の芽吹きを感じさせるローズマリーの刺激が加わって春を連想させるチーズになっていて面白い。
3.スプリンツ・ブロック
スイス 牛乳 セミハード・ハード
ヨーロッパ最古のチーズの1つとされているのがスプリンツ。短くても1.5年、長いものでは3年熟成されているので水分が抜けてかなり硬く濃厚な味わい。カンナのような専用のスライサーで薄く削って食べられることが多い。さわやかな甘味があって食べやすいチーズで、ミルクの旨味が結晶化したコリコリとした食感が混ざる。
4.ケソ・マンチェゴ・アルテサーノ
スペイン 羊乳 セミハード・ハード
ドン・キホーテにも登場したスペインを代表するチーズがケソ・マンチェゴ。アルテサーノはスペイン語で家内工業製の意味で、伝統的な製法を継承して作られている物のみが名乗ることができる。口に含むとまずは羊乳らしい甘みが広がり、芳醇な香りが鼻へと抜ける。ケソ・マンチェゴは何度か食べたことがあるが別物の美味さ。
5.カレ・ブラッスール
フランス 牛乳 ウォッシュ
カレなので正方形のチーズだ。フランス東部のアルザス地方で作られることが多い。ブラッスールはこの地方で作られるホップの香り豊かな白ビールで表面が洗われたウォッシュチーズだ。表皮の香りは強めだが、表皮を剥げば生地はなめらかな食感でどちらかというと大人しい。ミルクの甘みとコクをしっかりと味わうことができる。
6.ブルー・デ・コース
フランス 牛乳 青カビ
塩味を強めに感じる青カビチーズで、まずは塩味、塩に引き立てられるように牛乳のミルキーな甘さが口の中いっぱいに広がって、その甘さが消えて行くにつれて青カビの刺激的な苦みが後味として残る。これぞ青カビチーズといった感じの味の組み立てになっている。羊乳から作られるロックフォールを牛乳に置き換えた物だ。
7.トゥーマ・ドゥラ・パーヤ・ミニ
イタリア 混乳(牛乳・羊乳) 白カビ
羊乳・山羊乳・牛乳の3種類(今回食べた物は2種類だった)のミルクに、生クリームを加えて作られる。パーヤは藁のことで麦の藁の上で白カビを吹きつけて熟成される。白カビ部の風味は穏やかで生地もまろやか。ママの味系なのだが、すごく濃厚というわけではなく表皮も生地も穏やかな印象。ミニは1個150gと小ぶりだ。
著者: へた釣り