美味しいには2種類あると思う。玄妙で複雑な味をひも解いていくとほっぺが落ちちゃう繊細な美味しさと、ほら美味いだろ!!とド真ん中をついてくる明快な美味しさ。ワインを飲むと感じるしチーズでも感じることがある。美味い!!という感動にたどり着く手順の複雑さが違うだけでどっちも美味い。
今週もフェルミエ渋谷店の7種類のチーズセットを購入。バレンタインチーズの1つであるクール・エス・ア・ラ・ローズがこの時期しか食べられない物だと知っていたので、それが入っている物を選んだ。そのせいだろうか、今回のチーズセットは明快な美味しさを提示してくれる物が中心であったように思える。加えてダブルクリーム、トリプルクリームの白カビチーズまで購入。追加するのはもう少し繊細な味わいの物にすべきだったと反省。
明快な美味しさの物が中心。ダブルクリーム、トリプルクリームの白カビチーズにハズレなし。それにブリア・サヴァランに似たバレンタインチーズやアップルパイチーズまで。一方の繊細な味わいの代表はロックフォール・カルル。ロックフォールは何種類が食べ比べると作り手によって味の違いがあって面白いかも。熟成し食べ頃のカマンベールとダブルクリーム、トリプルクリームの白カビチーズの差も楽しかった。
1.クール・エス・ア・ラ・ローズ
フランス 牛乳 フレッシュ
ハート型をしたバレンタインチーズの1つで、ブリア・サヴァランに似た少し酸味のあるチーズケーキのようなフレッシュチーズの上にローズペダル(バラの花びら)が散りばめてある。ブルゴーニュ地方のボーヌという街にあるアラン・エスというチーズ熟成士のオリジナルチーズであるらしく、そう聞くとなんだか希少性が高いような…。チーズの酸味とローズペダルの苦みを楽しむ。
2.アップルパイ・チーズ
イギリス 牛乳 その他
糖質オフ道楽中なのに食べても大丈夫かなぁと思いつつ、口に運ぶと止められない止まらないな美味しさ。イギリスのシングルトンという会社のスペシャルチーズであるらしく果糖を加えて甘味を出したチーズにレーズンとアップル、シナモンが練り込まれてある。チーズというよりはお菓子なわけだが、小麦の代わりにチーズが使われていると考えれば、これはこれで糖質オフになってる…ということにしておこうw
3.スプリンツ・ブロック
スイス 牛乳 セミハード・ハード
ヨーロッパ最古のチーズの1つとされているのがスプリンツ。短くても1.5年、長いものでは3年熟成されているので水分が抜けてかなり硬い。カンナのような専用のスライサーで薄く削って食べるのが正統派のようだが、今回は味が分かりやすいように厚めに。さわやかな甘味があって食べやすいチーズで、ミルクの旨味が結晶化したコリコリとした食感が混ざる。
4.シメイ・ア・ラ・ルージュ
ベルギー 牛乳 ウォッシュ
シメイ・ルージュといえば、お好きな人ならピンとくると思うがスクールモン修道院で醸造されるトラピストビールの中でも最も歴史のあるとされているビール。クロスグリ(カシス)のフルーティな香りがあるブラウンビールだ。牛乳にホップを加えて生地を作り、さらに表面をビールで洗って作られるのだからビール好きにはたまらないお味に。むっちりとしたクリーミーさの中に苦みを感じるので、タンニンの強い赤ワインとも合うかも。
5.カマンベール・ド・ノルマンディー
フランス 牛乳 白カビ
言わずと知れた白カビチーズの雄。数週間前に熟成しすぎ?ってくらいトロトロになった物を食べたが、今回は少し中央部に芯が残っている食べ頃の物。トロトロで超ミルキーな部分と素直で少しさっぱりとした牛乳のよさを味わえる部分、そして表皮のキノコっぽい味を全部味わえるので、非常に楽しい。あと何日かすると…全部トロトロ。
6.ロックフォール・カルル
フランス 羊乳 青カビ
ロックフォール村の洞窟で熟成された羊乳の青カビチーズだけが名乗ることができるロックフォール。世界3大青カビチーズの1つに数えられる。カルル社のロックフォールは伝統的な製法で作られ、無殺菌羊乳のコクと甘味、少し強めの塩を感じることができる。それに加わるのがピリッと青カビの刺激。口に含んだ瞬間に感じるまろやかで優しい味と遅れてやってくる刺激のギャップに萌える?
7.マンステール・フェルミエ
フランス 牛乳 ウォッシュ
修道院で作られたウォッシュチーズでフランスで最も古いチーズの1つに数えられる。古いウォッシュチーズというと強烈で個性的な香りと味かもと考えがちだが、マンステールに関してはマイルド。しっとり柔らかい生地の濃厚なミルキーさとコクの強さが素晴らしい。それでいて香りは強くない。ウォッシュチーズにクミンをトッピングするという食べ方はマンステールから生まれた物らしい。
8.シュプレム
フランス 牛乳 白カビ
カプレス・デ・デューでダブルクリームタイプの白カビチーズの安定した美味しさに気付いてしまったので購入した。楕円形できれいでキメの細かい白カビに表面を覆われたシュプレムはフランス語で「最高」という意味。ちょうどよい硬さの生地は濃厚なミルクの味がしてなめらかな食感。塩味も強くなくクセのない美味しさ。
9.サン・タンドレ
フランス 牛乳 白カビ
シュプレムとよく似たタイプなので買う気はなかったのだが、安売りされていたので食べ比べてみることに。脂肪分75%超えのトリプルクリームタイプで、一口食べるとなるほどと納得できる。チーズというよりまろやかなバターを食べているような濃厚さで塩味もやや強め。とにかく分かりやすい美味しさで、アメリカへの輸出用に作られ、日本にも入ってくるようになったチーズという出自になるほど~っとなる。
著者: へた釣り