自分でこういう演出ができるようになれたら素敵だなぁと思うがそこまでの知識と経験はまだ備わっていない。今週のチーズプラトーは春を予感させるチーズとそろそろお別れする冬のチーズとがお皿の上でせめぎ合う。山羊乳の爽やかさに春を、ドロドロに熟したクロミエに冬を感じる。
フェルミエ渋谷店のチーズセットを今週も買った。クロタンという小さな山羊乳のチーズが気になったのでそれが入っている物を選んだ。一緒に入っていたのが熟成が進んでドロドロになった白カビチーズのクロミエ。爽やかで軽やかな味のクロタンに春を感じる、クロミエの濃厚なミルクの味は冬。ローズマリーのスパイシーな香りも草木の芽吹きを感じさせるので春かな? バレンタインでもらったハート型チーズも少し熟成が進んでいい感じ。
山羊乳のチーズは苦手だという人がいるが、酸味があり爽やかな味わいなのでこの季節だけは食べたい。山羊乳は牛乳とは違い出産時期の春にしか採れない。保存技術の進化で年中食べられるようになったとはいえ、山羊乳チーズの旬は春。実際、その味は春らしいと思う。しばらくは山羊乳を追い掛けようかなぁ。
1.ロックフォール・カルル
フランス 羊乳 青カビ
ロックフォール村の洞窟で熟成された羊乳の青カビチーズだけが名乗ることができるロックフォール。世界3大青カビチーズの1つに数えられる。カルル社のロックフォールは伝統的な製法で作られ、無殺菌羊乳のコクと甘味、少し強めの塩を感じることができる。それに加わるのがピリッとした青カビの刺激。口に含んだ瞬間に感じるまろやかで優しい味と遅れてやってくる刺激のギャップに萌える?
2.マンステール・フェルミエ
フランス 牛乳 ウォッシュ
修道院で作られたウォッシュチーズでフランスで最も古いチーズの1つに数えられる。古いウォッシュチーズというと強烈で個性的な香りと味かもと考えがちだが、マンステールに関してはマイルド。しっとり柔らかい生地の濃厚なミルキーさとコクの強さが素晴らしい。それでいて香りは強くない。ウォッシュチーズにクミンをトッピングするという食べ方はマンステールから生まれた物らしい。
3.クロタン・ド・シャヴィニョル・ドゥミ・セックル
フランス 山羊乳 シェーブル
クロタンはあまりうれしい話ではないが馬糞のこと。熟成が進んで表面がカビに覆われるとそっくりであるらしい。山羊乳らしい白い生地はボロボロと崩れる感じで酸味があり爽やかな味わい。栗のようなほっくりした食感を長めに口にとどめて楽しんでいると、濃厚なミルクの香りと味もしっかり感じることができる。シャヴィニョル村とその周辺で製造された物はクロタン・ド・シャヴィニョルを名乗れるそうだ。
4.サン・ネクテール・フェルミエル
フランス 牛乳 セミハード・ハード
厚めでしわしわ、いろんな色のカビが生えた表皮はお世辞にも美味しそうに見えないので、あまり期待せずに口に運ぶと評価は一転する。ねっとりと濃厚な生地はミルクの味がぎっしり詰まっている。ナッティーな香りもしっかり楽しめる。ローマ時代からある、オーヴェルニュ地方の山岳地帯で作られているチーズであるらしい。
5.クロミエ・レ・クリュル
フランス 牛乳 白カビ
熟成が進んで形を保てないほどにトロトロになったクロミエは最高だ。フランスを代表する白カビチーズがブリ。特に美味しいとされるブリ三兄弟の末っ子がクロミエ。超ミルキー&コクがあり、無殺菌乳らしい苦みやクセ。さらにマッシュルームのような白カビの外皮。白カビチーズの醍醐味を全部楽しませくれた。この濃厚さを味わうと殺菌乳の白カビチーズには戻れない。
6.カマンベール・ド・ノルマンディール
フランス 牛乳 白カビ
言わずと知れた白カビチーズの雄。トロトロに熟成したクロミエと食べ比べて楽しんでみてねという意図で同じセットに入れられたように思う。芯はなくなりまさに今が食べ頃。苦みと旨味、クセとミルキーさのせめぎ合いが口の中で巻き起るが、トロトロのクロミエに比べるとマイルドさも残している。どちらが好みかは人による? 個人的には両方大好き!!
7.クール・ド・ヌーシャテルル
フランス 牛乳 白カビ
バレンタインデーに子供からもらったハート型のチーズ。芯がほぼなくなりそろそろ食べ頃になってきた。口に入れるとダブルクリームタイプ?と勘違いするほどのバターのような濃厚なコク。百年戦争のころからあったチーズとは思えない現代風の味わいだ。塩っ気が強く意外とクセ者と思われていたが、それほどクセはなく、白カビチーズの中でも食べやすいように感じた。
8.オベハ・アル・ロメロル
スペイン 羊乳 セミハード・ハード
オベハはスぺイン語で羊乳の意味、ロメロはローズマリーのこと。羊乳で作ったチーズの周りにびっしりとローズマリーをまぶして3カ月間熟成させたチーズだ。ローズマリーの味と香りが生地にも浸透しており、爽やかな味わいに草木の芽吹きを感じさせるローズマリーの刺激が加わって春を連想させるチーズになっていて面白い。
著者: へた釣り