ブログなんぞをコツコツ書いている変わり者のご多分に漏れず無駄な知識が好きである。知らないことに出会うとそれだけで興奮しちゃうのだから我ながら安上がりと思う。故・中島らもは教養とは一人で時間を潰せる技術と言った。教養ってほどに整理できてないが、知識こそ最高の道楽。
今回へぇ~となったのが、テット・ド・モアンヌというスイス製チーズを削る道具の名前の由来。円筒形のチーズの表面を薄く削いでレースのように寄せる。花びらのようにと説明されることが多かったが、チーズの生地はやや黄味かかった物なので花びらには見えなかった。チーズの中央に棒を刺しその棒を軸に刃を回すこの道具はジロールという。ジロールで検索してみると、お目当ての道具の写真とともにジロール茸の写真も見つかる。ジロールで削られたテット・ド・モワンヌとジロール茸がよく似ている。調べてみるとやはりジロールの名はジロール茸に由来するらしい。ってことを知ってても得することなんて何一つないんだろうけどねぇ~。
2160円で7種類のチーズが入っているフェルミエ渋谷店のチーズセットはチーズを勉強中で未知のチーズの出会いには最高だったが……毎週買っていると食べたことのないチーズとの出会いがそろそろ減り始めているのが難点。なるべくだぶらないように選んで買っているのだが……チーズ道楽はトレーディングカード蒐集気分まで味わえるのかも。
1.マロワル・ソルベ
フランス 牛乳 ウォッシュ
フランス北部のベルギーとの国境近くで千年以上前から作られている修道院製のチーズだ。殺菌乳に赤い酵素を添加して作られる。丁寧に塩水で現れた表皮からは強烈な香りがするようになり、ベタ付いた表皮とこの香りだけで苦手な人は顔をしかめるかも。表皮を剥げば濃厚でミルキーな味わい。少し塩味が強い系かな?
2.ロックフォール・カルル
フランス 羊乳 青カビ
ロックフォール村の洞窟で熟成された羊乳の青カビチーズだけが名乗ることができるロックフォール。世界3大青カビチーズの1つに数えられる。カルル社のロックフォールは伝統的な製法で作られ、無殺菌羊乳のコクと甘味、少し強めの塩を感じることができる。それに加わるのがピリッと青カビの刺激。口に含んだ瞬間に感じるまろやかで優しい味と遅れてやってくる刺激のギャップに萌える?
3.グリュイエール・クラシック
スイス 牛乳 セミハード・ハード
エメンテラーとともにスイスを代表するチーズの1つで、スイス西部のグリュイエール村で12世紀ごろから作られていたとされている歴史あるチーズだ。チーズフォンデュに入っていることが多いのでグリュイエールという名は知らなくても食べたことがあるって人は多いと思われる。ナッティで深いコクのあるチーズなのでそのまま食べても十分に美味しい。
4.パヴェ・ダフィノア
フランス 牛乳 白カビ
今回のお目当ての未知のチーズの1つがこれ。パヴェは石畳の意味で、直方体のチーズだ。比較的よく売られているのを目にするチーズではあるが熟成した物がカスタードクリームのように美味しいとされていたので手を出しにくかった。トロリと熟成済みの物を見て迷わず購入。濃厚なミルクの味がして絶品。直方体の上部を剥がして1個丸々食べてみたくなる。
5.ウブリアーコ・セッコ
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
ワインの樽の中にチーズを隠したことで生まれたいわうる酔っぱらいワインの1つ。モンテ・ヴェロネーゼというチーズをプロセッコという白ワインに漬けこんで物だ。口の中に入れるとポロポロと崩れ、まずはミルクの味が。少し遅れてワインの味が口の中に広がってくる。やっぱり白ワインと合うのかな?
6.クロタン・ド・シャヴィニョル・ドゥミ・セックル
フランス 山羊乳 シェーブル
クロタンはあまりうれしい話ではないが馬糞のこと。熟成が進んで表面がカビに覆われるとそっくりであるらしい。山羊乳らしい白い生地はボロボロと崩れる感じで酸味があり爽やかな味わい。栗のようなほっくりした食感を長めに口にとどめて楽しんでいると、濃厚なミルクの香りと味もしっかり感じることができる。クロタンの中でもシャヴィニョル村とその周辺で製造された物はクロタン・ド・シャヴィニョルを名乗れるそうだ。
7.テット・ド・モアンヌ
スイス 牛乳 セミハード・ハード
テット・ド・モアンヌは修道士の頭という意味。修道士の頭のように硬いのではなく、教会の土地を借りて小作する農民が修道士の人数分このチーズを納めていたことにその名は由来するようだ。表面を塩水で拭きながらエピセアの棚で熟成されているので、風味豊かでフリュイテなチーズだ。少しねっとりとした生地は濃厚で薄く削って食べるくらいがちょうどいいんだと思う。
8.りんどう
日本(栃木県) 牛乳 ウォッシュ
今回のチーズセットのお目当ての2つ目がこれ。那須高原の今牧場チーズ工房で作られているタレッジョに似たウォッシュチーズだ。イタリアから取り寄せた乳酸菌を使って作っているらしい。ウォッシュチーズだが日本人の舌に合わせて香りもクセも控えめで穏やか。ねっとりとした食感とミルクの味を素直に楽しめる。盛り合わせの中に入れてしまうと少し物足りないかも。
著者: へた釣り