チーズの多様な味わいに驚きが絶えない。春は山羊乳チーズが旬を迎える。食べたことがないシェーブルチーズとの出会いが楽しみ。サント・モール・ブランの軽やかでヨーグルトのようにさわやかな味わいはそれまで雪で閉ざされていたであろう山に訪れた春を表現しているようで感嘆♪
円筒のバトン状チーズの中心に型崩れを防ぎチーズを呼吸させるための藁の芯が1本通っている。表面に山羊乳の酸味を抑えるため木炭の粉がまぶされているサント・モール・ド・トゥーレーヌは熟成の若い物もトレ・セックと呼ばれる熟成が進んだ物も食べたことがあったが、あえて木炭をまぶさず酸味を前面に押し出してフレッシュな山羊乳の美味しさを味わえるサント・モール・ブランはまさにこの時期に楽しむのにふさわしい春の訪れの喜びに満ちたチーズだった。四季折々の旬を食を通して楽しむのは日本人もフランス人も同じなんだなとうれしくなった。
似たような味のチーズを食べくれべてその差を探り当てるのも楽しい。ブルーチーズなどはそうやって楽しんで好みの物を絞り込んでいくのがいい気がする。性格の全く違うチーズを1枚のプラトーに盛っていろんなチーズがあることを舌と鼻、そして頭を使って楽しむ。チーズ売り場には多種多様、季節ごとに現れる未知のチーズがまだまだいっぱいある。食べ放題ならいいんだけど……猛烈に太るねwww
1.ブルー・デ・コース
フランス 牛乳 青カビ
塩味を強めに感じる青カビチーズで、まずは塩味、塩に引き立てられるように牛乳のミルキーな甘さが口の中いっぱいに広がって、その甘さが消えて行くにつれて青カビの刺激的な苦みが後味として残る。これぞ青カビチーズといった感じの味の組み立てになっている。羊乳で作られるロックフォールを模して牛乳に置き換えた物なので食べ比べてみると面白い。
2.りんどう
日本(栃木県) 牛乳 ウォッシュ
那須高原の今牧場チーズ工房で作られているタレッジョに似たウォッシュチーズだ。イタリアから取り寄せた乳酸菌を使って作っているらしい。ウォッシュチーズだが日本人の舌に合わせて香りもクセも控えめで穏やか。つきたてのお餅のようなねっとりとした食感とミルクの味を素直に楽しめる。盛り合わせの中に入れてしまうと少し物足りないかも。
3.ケソ・デ・バルデオン
スペイン 牛乳・山羊乳 青カビ
塩漬けされたカエデの葉に包まれた青カビチーズ。牛乳と山羊乳の混乳から作られるのでミルクの甘さとコクをしっかり味わえる味の構成。口に入れるとまず青カビのそれほど強すぎない刺激を感じる。少し遅れてミルクの甘味とコクがやってくる。生地は水分が少なめで少しパサパサした感じで口の中に入れるとパラリとほぐれて味が広がる。
4.ゴリアルド
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
赤ワインの味をしっかり感じることができる酔っぱらいチーズだ。バルベーラ・ダスティのワインが生地にも練り込まれており、その名の通りバルベーラ種のワインの特徴であるチェリーのようなアロマと酸味がある。ゴリアルドは秘密結社のことみたいで、税の取り立てを逃れるためにワイン樽にチーズを隠していた酔っぱらいチーズの始まりを思わせるネーミング?
5.パヴェ・ダフィノア
フランス 牛乳 白カビ
最近のお気に入りのチーズがこれ。たまたまなのか熟成具合がすばらしいのだ。パヴェは石畳の意味で、直方体のチーズだ。比較的よく売られているのを目にするチーズではあるが熟成した物がカスタードクリームのように美味しいとされていたので手を出しにくかった。トロリと熟成済みの物を見て迷わず購入。
6.カンタル・アントル・ドウ
フランス 牛乳 セミハード・ハード
2000年以上の歴史があるという40キロ級の大型のチーズで90日以上熟成された物を「アントル・ドゥ」と呼ぶ。乾いた表皮はゴツゴツと武骨な感じだが、生地はナッティで繊細な味わい。口の中でもろく崩れ濃厚なミルクの香りが広がり、苦みを後味に残して溶けて消えて行く。赤ワインと合いそうなお味。
7.サント・モール・ブラン
フランス 山羊乳 シェーブル
フランスのシェーブルチーズを代表するサント・モール・ド・トゥーレーヌの亜種? 円筒状に型を整え中央に藁を1本通すとこまでは同じ作り方だが、トゥーレーヌが木炭をまぶして熟成されるのに対して、ブランはそのまま熟成される。その違いが味にはっきり表れるのだから面白い。ブランは山羊乳の酸味が強くフレッシュな味わいの春のさわやかさを表現したかのようなチーズ。もう少し熟成させても面白いそうだ。
著者: へた釣り