世界三大ブルーチーズと呼ばれているのがフランスのロックフォール、イタリアのゴルゴンゾーラ、イギリスのスティルトン。それぞれ味に個性があって面白い。当然、ほかにもブルーチーズはたくさんある。青カビの刺激の強弱、塩加減にバリエーションがあって食べ比べると面白い。
青カビチーズを見るとき、まずは青カビの入り方を見る。青カビの刺激はどのくらいの面積を青カビが占めているかに比例することが多い。青カビチーズのもう1つの特徴は塩分が強いこと。これはチーズ売り場で店員さんに聞いてみると分かる。そのとき塩分の強さだけでなく「食べやすい」か「青カビチーズがお好きなら」といった具合のアドバイスをもらえることが多い。個人的には「お好きなら」を買うことが多い。あとはもう食べてみて好みの物を見つけるしかない。青カビの刺激が強く出る物、甘みが前面に出る物、塩っ気でビックリさせてからといった具合に味の組み立てがチーズごとに違うのが青カビチーズだ。同じ種類のチーズでも生産者の違いで味の組み立てが違うこともあり、食べ比べて一番面白いチーズだといえる。
世界三大チーズならゴルゴンゾーラが一番塩味も刺激も控えめで大人しい。水分が多めでまろやかさもある。一番刺激的なのはロックフォールだ。羊乳の甘さとコクを楽しめる一方でまずは塩味の洗礼を受ける。最後に青カビの強い刺激。甘みが少しずつ消えて行ったあとにピリッとした刺激を余韻として味わう。スティルトンは水分少なめでパサパサとしており、その分牛乳の甘味を強く感じる。強めの塩分が甘さを一層引き出してくれる。青カビの刺激はちょうど中間かな。
1.ロックフォール・パピヨン・オーガニック
フランス 羊乳 青カビ
世界最古のチーズの1つとされるロックフォールは熟成を決められた洞窟内で行わなければならないなどの厳しいルールの下で作られる。青カビの刺激と羊乳の甘みとコクのバランスが絶妙で口の中で消えて行くのが惜しくなる、ザ・青カビチーズといってもよいのではないだろうか。奥深い味わいにうっとりしちゃうよ。
2.シャロレ
フランス 山羊乳 シェーブル
先週トノーを食べたので食べ比べてみた。シャロレとトノーは大きさ違いの兄弟みたいな物らしい。白くきれいなキメ細かい生地を口の中に入れるとフレッシュな山羊乳らしい優しい酸味が広がる。生地はほわっとほぐれて甘みが襲ってくる感じだ。トノーとの差は? よく似ているけどシャロレの方が大きい分甘みが少し強いかな?
3.スティルトン
イギリス 牛乳 青カビ
三大青カビチーズの1つ。少し黄色味を帯びた生地に大理石のように青カビが広がる。水分が少なめで少しパサパサしていた。塩味は優しい感じでミルクの甘みをほどよく引き立ててくれる。青カビの刺激はピリッとシャープで香りもやや強め。青カビのたくさん入っているところと少なめのところで味わいが随分と変わるのが面白い。
4.りんどう
日本(栃木県) 牛乳 ウォッシュ
那須高原の今牧場チーズ工房で作られているタレッジョに似たウォッシュチーズだ。イタリアから取り寄せた乳酸菌を使って作っているらしい。ウォッシュチーズだが日本人の舌に合わせて香りもクセも控えめで穏やか。つきたてのお餅のようなねっとりとした食感とミルクの味を素直に楽しめる。盛り合わせの中に入れてしまうと少し物足りないかも。
5.ブルー・ドーヴェルニュ
フランス 牛乳 青カビ
19世紀にライ麦パンについた青カビをチーズ作りの過程で混ぜることでできたオーベルニュ地方を代表するブルーチーズだ。青カビの入り方が密で味は均一。ねっとりとした食感の生地は口の中で青カビ部分から崩れていく。刺激は少し控えめに感じる。食べやすいブルーチーズではあるが、食べやすすぎてブルーチーズらしさがないほどでもなく、青カビ入門にちょうどいいかも。
6.デリス・ド・ブルゴーニュ
フランス 牛乳 白カビ
ワインの産地として知られるブルゴーニュ地方で作られている白カビチーズ。表面はきれいな白カビで覆われており、クリームを足して作られる生地は柔らかくミルキーで口の中で蕩ける食感を楽しめる。優しい味すぎて物足りないと感じてしまうのは、クセ者チーズに慣れてしまっているからで、チーズらしい優等生チーズだと思う。
7.ローザ・ディ・カプラ
イタリア 混乳(牛乳・山羊乳) セミハード・ハード
麻袋に包んだカードをプレスするため、表面には布の結べ目の跡がある。標高1000メートルの渓谷にある貯蔵庫でじっくり熟成される。このため生地は柔らかく仕上がり、ねっとりと舌にからみついてくるような食感。山羊乳と牛乳の混乳で作られている。甘みとミルキーさは存分に感じられる。
8.ヴァルテッリーナ・カゼーラ
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
ワインよりもミルクを多く産する土地として知られるイタリアのヴァルテッリーナ渓谷で1300年前から作られているという伝統のチーズ。土地伝統種の乳牛、ブルーナ・アルピーナの部分脱脂乳のみを用いて作られているそうだ。お餅のような食感が楽しく、なんだか素朴な味わいがある。味は繊細なので、口の中に長くとどめてじっくり楽しむのが面白いように思う。
9.ゴルゴンゾーラ・マスカルポーネ
イタリア 牛乳 青カビ・フレッシュ
3大青カビチーズの1つ、ゴルゴンゾーラとフレッシュチーズのマスカルポーネを層にしてくっつけたチーズ。ゴルゴンゾーラの刺激とマスカルポーネの甘さが口の中で混然一体となって口にふくむとワハハハと笑っちゃうしかない絶妙な美味さになっている。別々に食べるよりも面白い。
10.ブルー・ドゥ・ブルビ・レガリス
フランス 羊乳 青カビ
羊乳で作られた青カビチーズの代表はロックフォールだが、似た物ではなく全く違う物になっている。水分量が多くふんわりと柔らかい生地になっており、崩れないように周りをワックスで固めてある。塩は少し強めで羊乳の甘みの強さと拮抗する。青カビの風味は強めだが刺激は意外とまろやかで日本酒のお供にもなりそうな独特な味わい。
著者: へた釣り