冬は人をひねくれさせる? 熟成が進みクセ者感が出たチーズを追い求めてきたのに、桜も散り、初夏を思わせる日和が混ざるようになると食べたいチーズにも変化が起きた。ミルクの優しい甘みが感じられる素直なチーズがうれしい。豊かな香りを残してくれる力強さもあるとなおいい。
春って短くなっていると感じることがある。春のチーズを楽しめるのもそろそろ終盤戦のような気がしている。今じゃないと楽しめないフレッシュ感のあるシェーブルチーズのクーロンヌ・ロッシュワーズが今回の主役。山羊乳らしい真っ白な生地はさわやかな酸味を残してほどけるように崩れ蕩けて消えて行く。チーズ道楽では山羊乳チーズで春の訪れを感じると知った。それでは夏の入り口は何で感じる? クセ者感よりもフレッシュ感か…夏らしい優しいミルクの香りを楽しみたい。
フェルミエ・渋谷店のオススメチーズセットを買った。何種類かある物からこれを選んだ理由はお目当てのクーロンヌ・ロッシュワーズが入っていたからだが、一緒に入っていた白カビチーズも青カビチーズも、クセ者感が出るはずのウォッシュチーズまでもが食べやすい物になっていたのに驚いた。いずれも素直にミルクの美味しさを楽しめる。初夏を感じるチーズってことかな?
1.マオン・メノルカ
スペイン 牛乳 セミハード・ハード
パプリカとオリーブオイルを塗りながらゆっくりと熟成されたチーズで濃厚な味わいと香りの強さが特徴だ。ポロポロと口の中で崩れる生地は少し塩が強めだが同時にミルクの甘みがすごく濃厚に感じられる。甘みが消えてもナッティな香りの余韻を残してくれる。「潮風を連想させる風味」ということなので夏を感じるチーズだ。
2.カレ・ド・ロレーヌ
フランス 牛乳 白カビ
きれいでキメが細かい白カビで表面を覆われた四角い白カビチーズでとにかく食べやすい。ほどよく弾力がありフワッとした食感が楽しめる。ミルクの優しい甘みが感じられ、塩味も控えめだ。後味にミルクの香りが鼻に抜けるように感じる。美味しいチーズを食べたことないって人の最初の1切れに手放しでオススメできる。
3.アズィアーゴ・プレッサート
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
トムとジェリーのチーズのように不規則な孔(チーズアイ)が空いている。プレッサートは加圧するの意味で熟成される前にプレスされる。甘みと酸味のバランスがよく、弾力のある食感までとにかく食べ飽きないお味だ。このチーズも避暑地の高原を思わせる香りの余韻があるような気がする。
4.ヴァルタレッジョ・アル・タルトゥーフォ
イタリア 牛乳 ウォッシュ
イタリアを代表するウォッシュチーズがタレッジョ渓谷で作られているタレッジョ。塩水で洗われる表皮にはウォッシュらしい香りはあるものの生地のミルキーさと優しい甘さは非常に食べやすい。そんなタレッジョにトリュフを混ぜた物がこれ。生地の中に点在する黒点がトリュフだ。味というより生地に移ったトリュフの香りを楽しもう。
5.シュロップシャー・ブルー
イギリス 牛乳 青カビ
黄色の生地に大理石様に広がる青カビなのでスティルトン系のモダンイブリティッシュチーズだ。この手のチーズはスティルトンよりクセ物感が控えめになっていて食べやすくなっていることが多いが予想通りの味だった。少し水分が多めの生地は甘く力強い。塩味は少し抑えめで青カビの刺激はほどよい感じでマイルド。
6.ロッコロ
イタリア 牛乳 ウォッシュ
ウォッシュチーズだが木の板の上でゆっくり熟成されるためナッティな香りがする。セミハードだと思い込み言われるまでウォッシュだとは気付かなかった。表皮は茶色く毛羽立った感じなので剥いで食べよう。ねっとりとミルキーな味わい。チーズに求める美味しさ(ウォッシュ&セミハードだから?)が濃縮され、分かりやすく美味しい!!
7.クーロンヌ・ロッシュワーズ
フランス 山羊乳 シェーブル
クーロンヌは王冠の意味らしい。真ん中に穴が空いている。ドーナッツと書いた方が分かりやすいか。表面には灰がまぶされており王冠には見えないというものある。白くむっちりとした生地は山羊乳らしいさわやかな酸味があり春らしいシェーブルチーズの味を満喫できる。食べた物は酸味が勝ちすぎている感じだったのでもう少し熟成させてみると面白いかも。
著者: へた釣り