朝目覚めた瞬間、今日はハムカツだぁ~って日あるよね。え? ない!? おかしいなぁ。でも、まぁいいや。個体差ってやつだね。ハムカツだぁって日、俺にはある。でもってそんな日は恵比寿和顔でハムカツランチ。昼から早朝までやってる恵比寿界隈の呑んべな人たちに愛されてる店だ。
JR恵比寿駅の西口から駒沢通りを代官山方向に歩く。駅前の信号から続くアーケードが途切れないうちに恵比寿和顔は見つかるはずだ。大きな看板がかかっているので見逃すなんてことはまずないはず。お世辞にもきれいな店ではない。恵比寿の居酒屋というよりは海の家といった佇まいである。ガラスの引き戸を開けるとテーブル席が4~5個並んでいる。20人も入ればいっぱいという感じで夜のピーク時間はよほど運がよくなければ入れない。入れなくても店の軒先で立って呑んでいる人がいるけどね。お酒も肴も安くて良心的な店である。どれくらい良心的かというと、プレミア焼酎3Mの筆頭ともいえる森伊蔵が一杯700円。安い店でもこの倍以上の値段はする。
肴も力の入った美味しい物からジャンクな物までそろっていて面白い。赤ウインナーはちゃんとタコさんの形に切って炒めてくれるうれしいお店である。美味しい物からジャンクな物までという店の方針はランチにもはっきりと見て取れる。美味しい物のイチオシは鯛茶漬け。ゴマだれをまぶしたタイの切り身をまずはご飯に乗せて、続いてお茶漬けにして楽しめる。ジャンクなランチはなんといってもハムカツ定食である。赤ウインナーとハムカツがメニューにある居酒屋にハズレはない。ほっぺたが落ちるほど美味しいとわけではないが、付け合わせのキャベツやスパゲティまで含めて、安酒屋のハムカツはこうでなくっちゃねと、期待した通りの見た目だし味である。朝目覚めた瞬間抱いた今日はハムカツだぁ~という妄執はハムカツ定食が運ばれてきた瞬間に昇華される。
和顔のサービスはほかにもある。雨の日は通常普通の味噌汁のところが豚汁になる。ご飯と味噌汁はオカワリ自由だが、豚汁は最初の一杯だけ。オカワリから普通の味噌汁になる。ランチは儲けをほとんど乗せずにギリギリでやっているからだろう。なのに帰り際に次回来店時に使えるサービス券をくれるのだから……サービス精神旺盛にもほどがある。料理が来るまで壁にずらりとならんだ芸能人やスポーツ選手のサインを眺めて楽しむ。
著者: へた釣り