今週買ったチーズセットにはフランスの物が2個、イタリアの物が3個、スペインの物が2個入っていた。チーズにもお国柄があり、同じ国のチーズでも地方によって差があるのが面白い。あえて四文字で表現するとフランスは「多種多様」、イタリアは「自由気儘」、スペインは「独立自尊」かな。
フランスは「1つの村に1つのチーズ」という言葉の通り、まさに多種多様なチーズが作られ、世界中に輸出されている世界第2位のチーズ大国である(1位は意外なことにアメリカ)。ワインを学ぶときもそうだけどチーズもフランスの産地(地方)ごとの味の特徴とタイプ(白カビ、青カビなど)ごとの違いを覚えると整理しやすい。チーズをそのまま楽しむことが多いフランスに対してイタリアのチーズは料理に使われ食べられることが多い。ゴルゴンゾーラから青カビが減っていったり、脱税のためにワインの樽に隠したチーズから酔っぱらいチーズが生まれたりと自由な感じがする。スペインのチーズは独特な味わいや形が楽しい。おっぱいチーズなど食感も味わいも一風変わった物が多いし、生地が灰色なんて青カビチーズ(カブラレス)も存在する。個人的にはスペインのチーズは味が好みのことが多い。
トロンチェットは熟成した山羊乳チーズの良さを余すとこなく満喫でき最も目立っていた。ローズマリー味のチーズなどイタリア勢は個性派ぞろい。フランスにはトロトロに熟成が進んだパヴェ・ダフィノアというスターがいる。フルム・ダンベールは意外なことに今回が初紹介。こちらも超有名なスターチーズ。スペイン勢ではワイン色に染まったケソ・デ・ムルシア・アル・ビノの存在感はピカ一。イディアサバルの燻製香も個性を放つ。
1.トロンチェット
イタリア 山羊乳 シェーブル
一度好きになったらたまらないクセのある表皮の香り、純白でキメの細かい生地には少し酸味がある、そして表皮と生地との境目はトロトロで超濃厚。山羊乳チーズの醍醐味を全部楽しめるちょうどいい熟成具合のチーズだった。トロンチェットは小さな幹の意味で円筒形。野生のハーブを食べた山羊の無殺菌乳から作られている。
2.フルム・ダンベール
フランス 牛乳 青カビ
ロックフォールと並ぶフランスを代表する青カビチーズだ。ロックフォールが羊乳から作られるのに対して、こちらは牛乳から作られる。生地に広がる青カビは多めで、刺激をしっかりと味わえる。ピリッとした刺激のあとに牛乳の穏やかな甘みが口の中に広がる。崩れにくいのでサラダに入れたりハチミツに絡めたりしても楽しめる。
3.ロッコロ・ローズマリーノ
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
イタリアで最もポピュラーなウォッシュチーズ、タレッジョと同じ地域で作られており、木の板の上でゆっくりと熟成させて作られる。ロッコロはタレッジョ渓谷にあった狩人の小屋のこと。ロッコロを熟成させるときに表皮にローズマリーをつけた物がロッコロ・ローズマリーノだ。ローズマリーの香りがしっかり生地に移っている。
4.ケソ・デ・ムルシア・アル・ビノ
スペイン 山羊乳 セミハード・ハード
ムルシア地方で作られるワインはがっしり骨太で赤というより黒ワイン。度数は18度あるなんてことも。そんなムルシアワインで洗いながら6週間以上熟成された山羊乳のチーズだ。生地の白さと表皮のワイン色との対比が美しい。酸味はほとんど感じられず、ワインのタンニンによって引き立てられたチーズの甘みを強く感じる。
5.パヴェ・ダフィノア
フランス 牛乳 白カビ
パヴェは石畳の意味で、直方体のチーズだ。比較的よく売られているのを目にするチーズの1つであるが、熟成が進んでその形を保てなくなった物はカスタードクリームを舐めているような美味しさ。トロリと熟成済みの物を見たら迷わず買うことにしている。上部の表皮を剥がして丸々1個スプーンですくって食べるとし~あ~わ~せ~。
6.パルミジャーノ・レッジャーノ
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
説明不要?なイタリア産チーズの王様。パメザンチーズって呼び方の方が日本では通りがいい。短い物でも18カ月、長い物だと5年以上熟成されるので水分が抜け切って超硬質でじゃりじゃりな食感。噛めば噛むほどに旨味が出る。ナッティで甘い香りを楽しめる。かちわり状にして食べるのが一番美味しいと思う。
7.イディアサバル
スペイン 羊乳 セミハード・ハード
フランスとの国境近くで作られている羊乳のチーズでサクラやブナのチップを使って裏表24時間ずつ燻製されている。もともとは台所の煙で自然に燻されていたらしい。羊乳のコクのある甘みと燻製香とは相性抜群。燻製香は強すぎず弱過ぎずな絶妙な加減になっている。スモークチーズが好きなら試す価値あり。
著者: へた釣り