釧路発のB級グルメの1つがザンギ。唐揚げのことで鶏だけでなくタコを唐揚げにすればタコザンギといった具合に調理法を指す。釧路民には家で食べる家庭の味という認識であるらしく美味しい店教えてとお願いしても反応が意外なほど薄い。ザンギ入門にと元祖と殿堂入りのを食べてきた。
ザンギ発祥の店は釧路の飲み屋街にある鳥松というお店だとされている。もともとは焼き鳥屋としてスタートしたお店だが、1960年に鳥を丸ごと1匹仕入れてぶつ切りにして揚げたところそれが評判になる。ザンギという名は中国語で鶏の唐揚げを指す炸鶏(ザージー)に運が付くようにとンを入れてザンギと名付けられたとされているが、釧路周辺では呼びやすいように名詞が変化するという例(カゴメ→ゴメ、ヤマメ→ヤマベなど)がいくつか確認できているのでザーギーより語感か強く言いやすいザンギにいつの間にか変化したような気がする。
1匹丸々仕入れてぶつ切りにしてというのが鳥松の元祖ザンギの特徴で、骨ありを頼むのが正しい。今回は早い時間に行くとお店が満席で他所で一杯やってから掛け込んだのでお土産でとなった。閉店間際でも注文してからちゃんと揚げてもらえた。千鳥足でもバランスが取れる不思議な手提げ風に包んでもらえるのも懐かしい感じがしてうれしい。
包みを開くと、いろんな部位が混じっているのが分かる。腿や胸、手羽先、手羽元、せせりなどカラリと揚がっている。ザンギは鶏への下味が強いと聞いていたが、軽く塩味という感じでさほど味が濃いとは思わなかった。特徴は唐揚げなのに付いていたソース。元祖もタレありなのかな?と思ったが、タレというよりはスパイシーなウスターソース風のソースで、揚げたてのうちにこれをちょんと付けて食べると確かに唐揚げよりも香ばしく味は強めってことになる。骨は噛み砕けそうな物は噛み砕いて食べた。無理な物は骨に付いた肉をきれいに歯で削げ落としてからお皿に戻す。魚もそうだが骨際の肉は美味い!!
ザンギにさまざまに工夫したタレをからめた物がザンタレ。ザンタレの美味しい店を教えてと頼むと必ずあがるのが南蛮亭というお店なのだが、JR釧路駅から2駅も離れた場所にあるので行けない。釧路の繁華街周辺でザンタレが美味しそうなお店を探して見つけたのがさかまる末広店。ザンギ王決定戦というイベントで2011年から2013年まで三連覇を達成し、日本唐揚協会のからあげグランプリでも4年連続で金賞を受賞しているお店らしい。
唐揚げが名物と聞くといかにもな居酒屋を想像してしまうが、さかまるは随分と落ちついた感じの内装のお店。1人だったので居酒屋のというよりもバーっぽいカウンターに通される。じゃがいも焼酎清里が珍しかったので水割りで頼み、塩ダレキャベツ、カニとイクラの出汁巻き玉子、そしておろしザンタレをオーダーする。塩ダレキャベツの量に驚き、カニとイクラがたっぷり乗っているのに満足しているとお目当てのおろしザンタレが運ばれてくる。
唐揚げの表面には少し甘辛い感じのタレがまぶされている。その上に大根おろしとネギ、ゴマ。見た目のインパクトはそれほどでもないというのが正直なところ。期待していたほどではないかもと少し失望しつつ口に運ぶと、さすがはザンギ王三連覇! なるほど!!な味だと気付く。ザンタレの欠点はタレに味の重きを置きすぎて唐揚げらしいサックリ&ジューシーな食感が犠牲になることだと思っていたが、見事に両立している。タレの量は少なめだが、ザンギに歯を立てた瞬間に十分に甘辛さを楽しめる。唐揚げらしいサクッとした食感と噛み口から溢れる肉汁の美味しさはタレの味とは別にしっかりと味わえるようになっている。タレの味をもっと楽しみたいというのであれば、皿の底に残ったタレをソース代わりにして使えばよい。
行者にんにく焼酎なんて変わったお酒も置いてあった。じゃがいも焼酎は水割りにしてしまうとじゃがいもらしさが分かりにくかったのでロックで頼んだら、これが強烈な香りと味だった。ほかにもミネラルたっぷりな海藻を飼料にして育てた海藻ポークの山椒焼きなんぞを追加する。翌日の釣り用のご飯にもう1つの名物ザンタレ、ネギ塩ザンタレをお土産にしてもらう。冷めても不味いわけではないが、タレを吸い過ぎてしまうので、揚げたてを食べるのが一番というのが正直な感想だ。
著者: へた釣り