ザンギ、ザンタレに比べて、話を振ると釧路民の食い付きが異常にいいのが泉屋のスパカツ。熱々の鉄板の上にこんもり盛られたスパゲティ、その上に大きなトンカツ。これでもかって量のミートソースがかけられジュウジュウと音を立てる。釧路民三世代にわたって青春の味であるらしい。
釧路育ちの妻が帰省したとき、必ず泉屋というレストランに寄ってスパゲティを食べていたのは知っていた。美味しいの?と聞くと、「美味しくないのが美味しい」というなんとも返答に困ることを言う。泉屋は釧路発のB級グルメ、スパカツの元祖の店であると知り、糖質制限解除でハメを外したついでに食べてみることに。スパカツを食べてみたいと話すと、義母が「高校生のとき、釧路の人はみんな食べてた」と話してくれる。泉屋の開店は昭和34年、スパカツが登場したのは昭和35年。義母はちょうど高校1年~2年だった。「部活帰りにみんなで食べていた」そうだ。という話を妻にすると、泉屋本店の近くに以前はバスターミナルがあったらしく、この辺り一帯は帰宅時に高校生がたむろする場所であったと教えてくれる。
妻も「部活の帰りでお腹が減ったときは、肉まんかラーメン(いずれも現在は店舗なし)か泉屋でスパゲティを食べた」んだそうだ。現役の高校生である甥にも聞いてみると、「泉屋は行くよ」とのこと。ただし「俺はスパカツは嫌いだけどね」。高校時代にみんな食べたことがあるからスパカツの話をすると釧路の人は反応がいいんだね。
スパカツを注文する。妻はミラノ風というのを注文していた。店内は昭和の洋食屋というか、百貨店にあった大衆食堂風。お昼前に行ったのに結構、お客さんがたくさんいる。ほとんどの客はスパゲティを頼んでいた。待つことしばし、写真で見た通りのスパカツが運ばれてきた。すぐにかき混ぜるとソースが跳ねるので少し待つのが鉄則であるらしい。そうすることでスパゲティの底の部分が少し焦げて美味しさも増すと妻から教わる。もう大丈夫かな?と混ぜてみると、量が多いし、トンカツが崩れ落ちそうで結局はあまり混ぜることなく食べ始めることに。
味について書くのは難しい。パスタではなくスパゲティ……それもミートソースかナポリタンしかなかった時代の炒めたスパゲティだ。トンカツは北海道産のポークが使われているようで柔らかい。ミートソースがからんでもサクッとした食感が残るように厚めの衣をまとっている。ミートソースもなんだか懐かしい感じの味だった。この3つが合わさると化学反応を起こして…となるかというとどうだろう? 昔ながらのスパゲティもトンカツも好きなのでもちろん美味しくないわけがない。でも…これをものすごく美味しいと感じるには青春時代の懐かしい思い出という調味料が必要かも。
妻が頼んだミラノ風は醤油味でこれまたこんもり盛られた麺の天辺に玉子の黄身と刻み海苔。一口食べさせてもらったがどちらかというと和風に寄った味付けだったので何をもってミラノ風?と悩むが、そうやって首をかしげるとこまで含めて泉屋のサービスなんだと思う。妻いわく「このクタッとした感じの麺が最高!!」であるらしい。
スパカツは「ミートスパカツ」という名でコンビニでも売られていたし、「××ミート」という名のさまざまなアレンジメニューも登場しているようである。変わり種××ミートを提供している、とんでん龍というお店の前までは行ってみた。気になるのはギョーザミート。カツの代わりに焼き餃子が乗っているそうなのだが……スパカツに続いてギョーザミートまで制覇すると血糖値が跳ね上がりそうなので、変わり種××ミートの攻略は来年に持ち越し?
著者: へた釣り