北海道に行ったからには美味しいチーズを探す。道楽者にしてみればこれはもう使命である。東京では見かけたことがないチーズを、見つけては瞬時も迷わず買い漁る。今回見つけたチーズでNo.1はチーズ工房チカプのシマエナガ。ダブルクリームタイプでバターのような美味しさだった!!
シマエナガは北海道に行く前から目をつけていたチーズだった。シャウルスに似た円筒形の白カビチーズで、牛乳にクリームを足して作られるダブル(トリプル?)クリームタイプだ。バターを思わせるような濃厚な味だと期待していた。釧路の小さなワインショップひこやちやで売られているのを発見し購入できた。キメの細かい白カビに覆われた円筒形のチーズは少し中央部が凹み始めており、熟成が進み食べ頃だってことを教えてくれる。東京まで持ち帰ると一番美味しいタイミングを逃してしまいそうだったので、すぐに食べた。表皮の白カビはあまり主張しない。表皮と生地との境目はドロリと蕩け初めており、バターのような濃厚なミルクの味を楽しめる。牛乳の甘みを存分に感じられるクリーミーな生地は絶品で、今回手に入れた物の中でどころか、これまで食べたことがある国産の白カビチーズの中でもNo.1の美味しさなんじゃないかと思う。
残りのチーズは東京に帰ってきてから食べたので、いつものように紹介する。横井牧場のわたすけは正統派の白カビチーズで極上の味だった。アネペツというハードチーズはミルクの優しい味と熟成したチーズのナッティな香りが楽しい。チーズ工房チカプのシマフクロウはコンテに似たフリュイテで複雑な香りとミルクが凝集された甘みが非常に美味しかった。今回購入したチーズの中ではチーズ工房チカプの物と横井牧場の物が頭一つ飛び抜けて美味しかったように思う。ウォシュチーズもいくつか買ったが、いずれも大人しめの味になっており、個人的には少し物足りない。
和商市場内にあるマルシェくしろは取り扱っているチーズの種類が豊富で釧路周辺で作られ、東京では見かけることがないチーズが見つかる。以前から和商市場に店を構えていたようだが、チーズに強いという印象はなかったので、最近力を入れ始めたのかな? 白糠酪恵舎や鶴居酪楽館のチーズは東京でも安定して手に入るので購入を見送った。
1.シマフクロウ
チーズ工房チカプ(根室) 牛乳 セミハード・ハード
放牧された牛のミルクから作られた長期熟成チーズで包装を破ると、途端に木の実を思わせるナッティな香りを中心に複雑な香りが広がる。長期熟成に耐える1ホール7キロの大型チーズだ。ミルクの甘みが強く感じられ、香りの豊かさ、濃縮されたミルクの美味さはフランスを代表するチーズの1つであるコンテを彷彿とされる。
2.アネペツ(6カ月熟成)
横井牧場(厚岸) 牛乳 セミハード・ハード
ブラウンスイス種の牛のミルクから作られたハードチーズでこちらも一口食べた瞬間にコンテのようなと感じたがスイスのチーズを手本にということなので、このナッティさと生地のコクはグリュイエールのようなとした方がいいのかな? アネペツはアイヌ語で小さな川という意味で牧場近くを流れる川から名を取ったようだ。
3.モッツァレラスモーク
おおともチーズ工房(厚岸) 牛乳 パスタフィラータ
日本人が大好きなパスタフィラータ製法(さけるチーズもこの製法)で作られたモッツァレラチーズを、これまた日本人が超大好きな燻製風味にしたという物。この組み合わせが外れることはないが、一方で予想通りの味という範疇に収まってしまうのもこの手のチーズ。嫌いな人はいないので北海道のお土産にはちょうどいいかも。
4.AFくらぶ ゴーダ
畜産食品加工研修センター(中標津) 牛乳 セミハード・ハード
江戸時代に唯一交易があったヨーロッパの国がオランダで、日本に最初に伝来した欧風チーズはゴーダだ。 AFくらぶとは、“アグリカルチャー(A)、ファンクラブ(F)”の略で、 畜産食品加工研修センターでは、チーズ作り体験のコース(4時間)もあるらしく今度、天候不良で釣りに行けなかった日は参加してみたいかも。
5.ブリック・ド・なかしべつ
ラ・レトリなかしべつ(中標津) 牛乳 ウォッシュ
中標津空港のすぐ近くにソフトクリームとヨーグルトがすごくおいしい喫茶店がある。この店を経営しているのがラ・レトリなかしべつ。チーズも作っている。ブリック・ド・なかしべつは軽いウォッシュタイプのチーズでもっちりとした食感と後味にまでしっかり残るミルキーな味を楽しめる。ウォッシュだが臭いもクセはなく食べやすい。
6.アカゲラ
チーズ工房チカプ(根室) 牛乳 ウォッシュ(セミハード?)
セミハードと紹介されていたがイタリアのタレッジョに似た優しい風味のウォッシュじゃないかと思う。塩水で表面を洗って熟成させる。ウォッシュ独特の臭いは気になられないレベル。もっちりとしてクリーミーで蕩けるような食感が楽しい。加熱して香りを引き立ててパンやジャガイモと共にという食べ方が勧められていた。
7.牧場のカマンベール
おおともチーズ工房(厚岸) 牛乳 白カビ
チーズは初めてという人にもオススメできるライトな風味のカマンベール。きれいな白カビで表面が包まれているが、白カビ自体は香りもクセもほぼない。熟成が若かったのか生地も穏やかな味わいでチーズ好きには少々物足りない感じだが、熟成が進めばと期待している。逆に言うとチーズに不慣れな人でも食べやすい優しい味だ。
8.わたすけ
横井牧場(厚岸) 牛乳 白カビ
サイズも表面の白カビや切り口の生地の様子もよく見るカマンベールとそっくり。味もそっくりだった。無殺菌乳で作られたクセ者系カマンベールには及ばないが、殺菌乳のカモンベールと全くそん色がない。どころかかなり美味しい部類に入る。白カビはマッシュルーム臭がしっかりあり、ねっとりとした生地は甘み強めで至福!
著者: へた釣り