学校の勉強だと一度覚えたことは覆ることはなく、知識はどんどん積み重ねていくだけで済む。これが道楽になると一本道ではない。情報は常に上書きする必要があり、知識の集積は三歩進んで二歩戻るの繰り返し。情報の量と奥行きに意欲を掻き立てられながら今日も一歩ずつ進む。
他人から、特に権威的な人から物を教わることが得意でない。こうであるべきだ、こうでなくちゃいけないって考えを押しつけられると生来曲がった臍がさらにひん曲がり、なんとしてもほかの方法を考えてやろうと意地になる。あの手この手とほかの人がやらない愚策を繰りだしてそれが上手くいったときが至福の一瞬である。剣崎沖でイサキという魚を171匹釣った。そこまでやる?という工夫を3年から4年かけて練り上げた成果だ。道楽ってこうでなくっちゃいけない。一歩一歩前に進むことを楽しまないとね。
今回、一番驚いたのは3年熟成物のゴーダ。ゴーダは外れないけど当たらない、際だった特徴のないチーズという認識だったが、ビックリした。ブリア・サヴァランにトリュフクリームなんてどこの料理の鉄人だって感じのバブリーなチーズやクセ者感全開で喉まで青カビの刺激でピリピリしちゃうのまで、チーズの世界の奥行きの深さを楽しめる7種類だった。
1.ブリア・サヴァラン・アフィネ・オ・トリュフ
フランス 牛乳 白カビ
最高級のデザートチーズであるブリア・サヴァランにトリュフクリームを挟んじゃったというのであるから無駄に贅沢な物を食べている感が凄まじい。フレッシュではなくアフィネなので酸味は控えめで生クリームを舐めているような甘みのあるふんわかとした生地にトリュフの香りがしっかり移っている。少量食べると最高だ。
2.ケソ・テティージャ
スペイン 牛乳 セミハード・ハード
尼さんのおっぱいなるなんとも艶めかしい愛称で呼ばれているチーズ。なだらかな円錐型をしているのがその所以だが、食べてみるとそれだけではない気が…。水分が抜けて硬くなってきている外側に対して、内部の生地はむっちりとしており、弾力のあるおっぱいの感触に似る。口の中で蕩け優しいミルクの味が広がり至福。
3.ヒルカス
イタリア 山羊乳 青カビ・シェーブル
山羊乳だし青カビだしでクセ者感たっぷりのチーズだが、期待を裏切らない。口に含むとまずは山羊乳から作られたチーズらしい甘みが楽しめる。塩っ気も強いなと感じているとピリッとしたというレベルを超えビリビリッとした青カビの刺激が襲ってくる。嚥下すると喉までピリピリするくらい。青カビに刺激に飢えてるならぜひ!!
4.プティ・ベルトー
フランス 牛乳 ウォッシュ
マール・ド・ブルゴーニュで洗われて熟成が進められた表皮は濃いオレンジ色になり、お好きな人にはたまらない、お好きじゃない人なら顔をしかめる香りを放つ。表皮を剥ぐとトロリと蕩けた生地が現れ、そのお味はというととにかく濃厚、濃密、超ミルキー。1個60グラムの小さなチーズなので一人占めして食べたくなる。
5.ゴーダ3年熟成・ゴールドスター
オランダ 牛乳 セミハード・ハード
ゴーダは本家オランダ産の物も日本を含めそのほかの国で作られた物も食べたことがあった。感想は外れないけど当たらないチーズであった。その認識を改めなくてはならない。36ヶ月以上熟成されたゴーダは別物だった。キャラメルのようなコクのある甘みに驚く。コンテにもパルミジャーノにも決して劣らない抜群の美味さだ。
6.マオン・メノルカ
スペイン 牛乳 セミハード・ハード
パプリカとオリーブオイルを塗りながらゆっくりと熟成されたチーズで濃厚な味わいと香りの強さが特徴だ。ポロポロと口の中で崩れる生地は少し塩が強めだが同時にミルクの甘みがすごく濃厚に感じられる。甘みが消えてもナッティな香りの余韻を残してくれる。「潮風を連想させる風味」ということなので夏を感じるチーズだ。
7.ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ
イタリア 山羊乳 シェーブル
ロッカヴェラーノはイタリア・ピエモンテ州の避暑地の地名でロッカヴェラーノで作られたロビオラってこと。ロビオラはこの地方を代表するチーズで各村どころか各家庭ごとに違う味があるとされるほど。ロッカヴェラーノは山羊乳らしい酸味が感じられクリーミーなのにすっきりとした味。甘口の発泡酒との相性がよさそうだ。
著者: へた釣り