大人の自由研究なんてふざけながらチーズの熟成を自分でコントロールできるかどうかを試してみた。熟成度合によってチーズは全く別の味になることを知った。このチーズは常温で何時間ずつ熟成させて何日後に食べようなんてことをやり始めるとチーズ道楽がさらに楽しくなった。
自分で熟成をコントロールする経験を積みたいなら白カビチーズが分かりやすい。生地の中央部の芯(少し硬そうにみえる部分)が消えれば食べ頃サインで、表皮との境目の生地はトロトロに蕩け始めている。自重を支えきれず少し変形し始めるのがトロトロ化の始まった印だ。毎日2時間くらい、野菜室から取り出し、室温に戻してみる。野菜室に戻す前に指で軽く表皮を押してみたり、表皮の様子に変化がないか写真で記録してみたりすると、本当に自由研究をしている気分になる。買ってきたチーズの状態が好みに合わないなら、自分で追加熟成させてみる。道楽者らしくていいんじゃない?
今回のチーズセットのお目当てはプーリニィ・サン・ピエール。きれいな四角錐(四分の一にカットされているけど)のチーズは初めて見た。ここでスルーすると次にいつ出会えるか分からないのでこれを買った。酸味と甘み、クセのある香りが心地よい、山羊乳チーズのお手本のようなチーズだった。フルーティな白ワインと合いそう。
1.ミラベラ
フランス 牛乳 ウォッシュ
ウォッシュらしい香りがたまらない。ミラベルという西洋すももから作られるブランデーで表面を洗いながら熟成されるチーズで、表皮はべたべたしているので剥いで食べる。生地はお餅のような弾力がありミルキー。口の中で牛乳の甘みがふわっと広がる。余韻にブランデー由来の甘酸っぱいような苦いような味が残るのが特徴。
2.ブリ・ド・モー
フランス 牛乳 白カビ
フランスを代表する白カビチーズで「チーズの王様」と称される。無殺菌の牛乳から作られるためコクがあり熟れたミルクの香りが強い。トロトロになってしまう前のほどよい熟成状態だったので、表皮の香り、生地の旨味がバランスよく楽しめた。完熟状態とどちらが好みかは人によるが、季節やワインで熟成を変えるのが理想。
3.ロックフォール・パピヨン・オーガニック
フランス 羊乳 青カビ
世界最古のチーズの1つとされるロックフォールは熟成を決められた洞窟内で行わなければならないなどの厳しいルールの下で作られる。青カビの刺激と羊乳の甘みとコクのバランスが絶妙で口の中で消えて行くのが惜しくなる、ザ・青カビチーズといってもよいのではないだろうか。奥深い味わいにうっとりしちゃうよ。
4.ミモレット・エクストラヴィエイユ 18+
フランス 牛乳 セミハード・ハード
天然色素のアナトーによって鮮やかなオレンジ色になる。熟成度合で呼び名が変わり「エクストラヴィエイユ」は18カ月以上熟成された物。若いうちはマイルドなチーズだが熟成が進むとくせ者化する。エクストラヴィエイユの食感はカラスミ。ねっとり歯にからまる食べ心地とナッツに似た香り、濃厚なミルクの味を楽しめる。
5.プーリニィ・サン・ピエール・フェルミエ
フランス 山羊乳 シェーブル
エジプト遠征に破れたナポレオンがムカついたせいで四角錐の天辺を切られたという逸話が残っているのがヴァランセ。ナポレオンに見つからずに難を逃れ、四角錐のまま現代に伝わり、ピラミッドの愛称を持つのがこのチーズだ。優しい酸味と甘み、そして鼻に抜ける山羊乳らしい少しクセのある香りを余韻として楽しめる。
6.プロヴォローネ・ドルチェ
イタリア 牛乳 パスタフィラータ
モッツアレッラと同じパスタフィラータという製造法で作られている。ほどよい弾力がある。表面を焼いて食べるとまるでお餅のように伸び、チーズステーキ用として売られていることも。そのまま食べても牛のミルクの味をしっかり感じることができるが、やっぱり焼いて食べるのが美味しさを一番感じやすいかなぁ~。
7.ロッコロ
イタリア 牛乳 ウォッシュ
ウォッシュチーズだが木の板の上でゆっくり熟成されるためナッティな香りがする。セミハードだと思い込み言われるまでウォッシュだとは気付かなかった。表皮は茶色く毛羽立った感じなので剥いで食べよう。ねっとりとミルキーな味わい。チーズに求める美味しさ(ウォッシュ&セミハードだから?)が濃縮され、分かりやすく美味しい!!
著者: へた釣り