前を通りかかるとフラッと吸い込まれそうなお店が何軒かある。安くて美味しい店が大好きな呑んべアンテナに反応する店たちだ。恵比寿だとさいき、うな徳、美㐂家が気になる。気になるけど昭和の香りがするこの3店は週末ともなれば満席のことが多く……美㐂家にランチで行ってきた。
恵比寿で最も場末感のある一画は駅前の恵比寿銀座通りの辺りだと思っている。夜になると怪しげな客引きが出没するし、路地を1本迷い込むとHなホテルがあったりする。場末感のある場所には、安くて美味しいお店がある。美㐂家は恵比寿銀座通りにあるパチンコ屋の脇の細い路地にある。縄のれんがかかったいかにも昭和っぽい店構えの居酒屋さんだ。ちょっと一杯と店を覗いたことが何度かあるが、一人でも入りやすいカウンター席はたいてい満席で縄のれんをかき分けただけで踵を返すことになる。気になる3軒のうち、唯一ランチ営業もやっている美㐂家でランチを食べてきた。
店の雰囲気は呑んべが和むというと分かってもらえるだろうか? 昔ながらの居酒屋である。入口付近にはカウンター席。店の中ほどは6人掛けくらいのテーブス席が2個、奥は小上がりになっており2卓ある。少し煤けた感じの調度が昭和な感じを醸す。平成も28年目になり人生の半分以上が平成のはずなのに……昭和っぽい方が馴染む気がするのはなぜだろう?
ランチメニューは海鮮丼(この日は本マグロ中落ち、白らす釜上げ)か魚定食(かれい煮付け、さば塩焼、紅しゃけ照焼、さんま塩焼)。値段はいずれも850円。今年はまださんまを一度しか食べてないのでさんま塩焼定食を頼む。待つことしばし。お膳に乗った定食が運ばれてきた。さんまは生ではなく開きだったが、サラダ、生卵、切り干し大根、漬け物に昆布の佃煮、ご飯に味噌汁とボリュームあり。さんまの開きは脂ノリノリで生のさんまよりも旨みが濃縮されている感じで、骨に身を一欠けも残すのが惜しい。さんまの脂を緩和するのに、切り干し大根を箸休めにするといい感じだった。夜も魚は相当期待してよさそう。
さんま塩焼と切り干し大根を食べてからがもう1つのお楽しみ。玉子かけご飯である。昆布の佃煮があるので醤油はほんの少しだけ。白いご飯の中央に窪みを作って、溶いた玉子を流しいれる。昆布の佃煮をトッピングして、ときどき漬け物にも箸を伸ばしながら……これが不味いわけはない。ちょっとご飯の量が多いかなぁという気もしたが、だからといってこんな美味い物、残せるわけもなく完食。
著者: へた釣り