チーズという食べ物は驚きに満ちている。ブリ・ノワールというチーズを買った。ブリは白カビチーズなのにノワール(黒)とは……。ブリ・ド・ムランというチーズを6カ月にわたって追熟させたもので、元の白カビチーズの特徴をかすかに感じられる程度に残しながら全く別の物に進化していた。
今週はクリスマス前ということで7種類のチーズを詰め合わせたいつものセットは手に入らなかった。どうしようかなぁと売られているチーズを眺めているとなんだか気になるチーズを見つける。ブリ・ノワールは白カビチーズを6カ月にわたって追熟させ、もともと1.5キロあったチーズを1キロ程度にまで水分を抜いて、味を濃縮したもの。白カビチーズなのに触ってみるとセミハードチーズのような硬さになっており、ノワールという名の通り生地は少し黒ずんでいる。常時入荷があるチーズではなさそうで、今買わないと次はいつ出会えるか分からない。値段も高くなかったのでブリ・ノワールを目玉にした自分で組み合わせた4種のチーズプラトーを作ってみたよ。
ブリ・ノワールのほかにもヴュリー・ルージュが珍しかったので購入。ピノノワールから作られたヴュリーという赤ワインで表面を磨いて熟成されたスイスのチーズで、ブリ・ノワールが味のある老練な男優だとすると、ヴュリー・ルージュはまさに人気絶頂の女優さんって感じの組み合わせになるのではと期待した。そんな目論見は上手くハマったような気がしている。
1.デリス・ド・ブルゴーニュ
フランス 牛乳 白カビ
ブルゴーニュ地方で作られている白カビチーズでシャルドネの白ワインにぴったり合いそうなフレッシュかつ爽やかな味わいのチーズだった。クリームを加えて作られた生地は酸味があってまろやか。口の中でフワッと消えていき、鼻から濃厚なミルクの香りが抜けて行く。余韻があるうちにシャルドネを一口と想像しただけで至福。
2.ブルー・デ・コース
フランス 牛乳 青カビ
塩味を強めに感じる青カビチーズで、まずは塩味、塩に引き立てられるように牛乳のミルキーな甘さが口の中いっぱいに広がって、その甘さが消えて行くにつれて青カビの刺激的な苦みが残る。優等生的な味の組み立てだ。羊乳で作られるロックフォールを模して牛乳に置き換えた物なので食べ比べてみると面白いかも。
3.ヴュリー・ルージュ
スイス 牛乳 セミハード・ハード
ピノノワールで作られた赤ワインのヴュリーで表面を磨き湿度の高いカーヴで3カ月以上熟成させてある。香りが面白く、ねっとりとした甘みのある生地は「香ばしいお味噌のような」と説明されることもある。スイスのチーズらしい濃厚な味わいとコクがあり、余韻も強い。ピノノワールの赤ワインとともにカチワリで食べたい。
4.ブリ・ノワール・ロワゾー熟成
フランス 牛乳 白カビ
ブリ三兄弟で最も個性的であるブリ・ド・ムランを名熟成士ジャン・クロード・ロワゾー氏が6カ月にわたって追熟させた。水分はほとんどなくなり、セミハードのような硬めのねっとりとした食感になっている。当然、味は濃縮されておりムランの味や刺激の片鱗をかすかに残しつつ、別のチーズとして味わえるようになっている。
著者: へた釣り