以前、国産チーズを集めて親しめる味ばかりだが狭い市場で勝負しているので個性に乏しい?と感想を書いたが、個性的なチーズを探し出す知識と嗅覚が足りなかっただけかも。久々の国産チーズプラトー。くせ者感がありそうな物を意図して選んだ。なかなか面白い盛り合わせになった。
個性的なチーズを求めるならアンテナショップはあまり適してないのかもしれない。どうしても万人受けしそうなミルキーでクセのないチーズの販売が中心になっていると思われる。共同学舎新得農場の「さくら」を食べて和菓子のように可憐な姿と繊細な味に驚いた。もう一度国産チーズを集めて食べてみようと思い立つ。チーズ専門店やチーズの目利きのいる食品店で国産チーズを物色すると、品ぞろえがアンテナショップとは随分と違うことに気付く。
さくらの美味しさは以前、単独で紹介したのでここでは触れない。さくらに勝るとも劣らない存在感を示したのが十勝野フロマージュのバーボンウィスキーウォッシュ。表面をバーボンで洗い上げたとあるが生地にもバーボン入ってない?ってほどに濃厚かつユニークな酔っぱらいチーズだった。花畑牧場のカマンベールは賞味期限ぎりぎりまで熟成させてみたら化けた。これがあるからチーズ道楽は面白い。
1.テネレッロ・シラリカ
白糠酪恵舎(北海道) 牛乳 セミハード・ハード
日本一の美味しいのでは?と紹介したモッツァレラを作っている白糠酪恵舎のセミハードチーズ。イタリア北西部のピエモンテ州のチーズであるブラ・テネロを手本に作られたらしい。熟成が短めでクセはなく、おだやかでやさしい風味とむっちりとした食感を楽しめる。少しだけ結晶化が始まっているのかミルクの甘味を強く感じるシャリとした部分が混じる。
2.冨【とむ】夢
冨田ファーム 牛乳 セミハード・ハード
こういう言い方がいいのかどうかは定かでないが、まるでほどよく熟成したコンテのようなチーズだった。熟成が進み水分が抜けて生地は硬め。特にワックスに近い(ワックスは剥がされた状態で販売)部分はおろし金で擦りおろせそうな硬さ。濃厚なナッティな香りはコンテそのもの。ミルクの味も力強くコクもあって目隠ししてコンテと食べ比べてどっちが冨夢と当てる自信はない。
3.ロビオーラ
白糠酪恵舎(北海道) 牛乳 ウォッシュ
強烈そうなウォッシュチーズをと選ぶと白糠酪恵舎の物になってしまった。真空パックされた封を切ると強烈なウォッシュ特有の香りが広がる。表面はマンスールやマロワルのように薄いオレンジ色でねっとりと湿っている。表皮は剥いで食べよう。ミルキーでコクがあり少し塩分が強めの正統派のウォッシュチーズだ。国産のウォッシュチーズでは今のところNo.1の美味しさ。
4.コバン
共働学舎新得農場(北海道) 牛乳 白カビ
小判の形をしたチーズできれいできめの細かい白カビに表面を覆われている。味は殺菌乳のカマンベールらしいミルキーさを残しつつ、ライト&まろやかで食べやすい感じになっている。表皮の白カビ部も硬く薄めでキノコ風の香りや味などはない。熟成させてみたらどうなるのかな?という興味もあるが、まろやかなうちに食べきっちゃうのがいいような気もする。
5.ゴーダチーズ
森のシェーブル館(茨城県) 牛乳 セミハード・ハード
茨城県水戸市で山羊乳のチーズを作っているのが森のシェーブル館。山羊乳の白カビチーズや表面に木炭をまぶしたサント・モールに似たチーズを作ってる。ただし、山羊乳には牛乳とは違い年中採れるわけではないのでこの時期は手に入らず。牛乳製のゴーダチーズを食べてみた。クセが少なく食べやすい。国産のゴーダらしいゴーダだった。
6.チーズとうがらし
渋谷醸造(北海道) 牛乳 その他
クリームチーズにハーブやガーリックを練り込むのがありなんだから、青唐辛子はどうだろうという興味本位で買ってしまった。十勝産クリームチーズにやはり十勝産の青なんばんの佃煮を混ぜ、なんと白醤油とかつおぶしで味を整えてある。クリームチーズの甘味のあとに残る唐辛子のピリ辛は、焼酎との相性が抜群によさそう。
7.バーボンウイスキーウォッシュ
十勝野フロマージュ(北海道) 牛乳 ウォッシュ
ブリやカマンベールなど白カビチーズを得意とする十勝野フロマージュが、カマンベールの表面をバーボンウィスキーで洗って熟成させたのがこれ。ワインやビールを使った酔っぱらいチーズは世界中にたくさんあるが、バーボンウイスキーウォッシュの酔っぱらい具合は世界最高クラスかも。とにかくバーボンの香りが半端なく、お酒に弱い人なら匂いを嗅ぐだけで酔っぱらいそう。生地にバーボンが練り込まれているわけではなさそうだが、中までしっかりバーボンの香りと味が浸みこんでいる。
8.農場ゴーダ
佐渡乳業(新潟県) 牛乳 セミハード・ハード
羽ばたくトキに変身するトキパック牛乳で有名は佐渡乳業だがチーズコンテストで入賞の常連でもある。農場ゴーダは残念ながらあまり特徴が際だったチーズというわけではなかったが、安定の美味しさ。「新潟県畜産安心ブランド生産農場」に認定された佐渡の酪農家の生乳を使用し添加物を一切使わず作られている。熟成は浅い感じでナッティな香りはなく万人が食べやすい国産らしいゴーダチーズだった。
9.さくら
共働学舎新得農場(北海道) 牛乳 その他
直径7センチくらいの小さな円盤型のチーズで中央に桜の花の塩漬けが飾られている。下側には桜の葉の塩漬けが敷かれている。生地は真っ白でとても美しく、しっとりとした食感。口に入れるとほのかな酸味がまず感じられる。少し遅れてミルクの甘味が、さらに遅れて塩味がやってくる。最後に口の中から鼻へと抜けて行くのが桜の香り。桜餅の香りだ。
10.とろける生カマンベール
花畑牧場(北海道) 牛乳 白カビ
このチーズを買ったのは2月の上旬。1切れ2切れ食べてみたが濃厚なミルクの味は感じられるものの、よくある国産のカマンベールの1つかなと思った。賞味期限ぎりぎりまで野菜室の奥で熟成させてみようと思いつく。これが大正解だった。芯がなくなり柔らかくなった生地は自重を支えきれずに少し沈み始めている。食べ頃になったとろける生カマンベールはまるでバターのような濃厚なミルクの味をしっかり味あわせてくれる。とろけた!
著者: へた釣り