大学で第二外国語にフランス語を選んだ記憶はあるが…何1つ覚えていない。20年以上経ってからチーズの名前の意味を知るためにフランス語と格闘しているのだからもう少し勉強しとけばよかったなぁっと。レ・クリュ(lait cru)は生乳のという意味。無殺菌乳で作られたチーズってことだ。
AOPでは産地だけでなく製造法まで詳しく決められていることがあり、例えば、カマンベール・ド・ノルマンディやブリ・ド・モーなどは無殺菌乳で作られていることが条件。つまりその名で売られている物はすべてレ・クリュなわけだ。一方でカマンベールやブリとして売られているチーズのほとんどは殺菌乳で作られており、産業としての規模、流通量では後者の方が圧倒的に大きい。食べ比べてみると名前の一部が同じというだけで全く別のチーズであることに気付く。チーズを買うならスーパーのチーズの棚ではなく、専門店をお勧めしたい。スーパーで売られているチーズを食べつくしてこんなもん?と思っていた人に、チーズとはこんなにも驚きに満ちた嗜好品だったのかと教えてくれる。
ワインを作った絞りかすに漬けた酔っぱらいチーズ、カマンベールの表面にカルヴァドスを含ませたパン粉をまぶして熟成させたもの、さらにミルクの味をしっかり楽しめるレ・クリュなチーズ2種と、味のバリエーションの豊富さがうれしいチーズの盛り合わせになった。チーズは驚きに満ちている!!
1.コンテ
フランス 牛乳 セミハード・ハード
コンテを食べるとき意識するのはフリュイテとは?ってこと。エピセアの板の上に置かれて熟成されるコンテは、最低でも83種の風味を持つと言われている。鈍い味覚と臭覚でいくつのフリュイテを探せるかに挑戦する。そんな難しいこと考えなくても芳醇な香りと濃厚なミルクの味を楽しめる鉄板で美味しいチーズなのだが……。
2.オッチェッリ・アル・バローロ
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
テストゥンという超硬質なチーズをバローロワインの搾りかすに漬けこんだ、いわうる酔っぱらいチーズの1種だ。テストゥンは石頭の意味。硬い生地がお酒でほどよく柔らかくなり口中でパラリとほぐれる。ワインのタンニンによって甘さが引き立てられる。ほどよく赤くなっている姿もまさに酔っぱらいである。ブドウの粒はお好みで。
3.カドス
フランス 牛乳 白カビ
白カビチーズにカテゴリー分けされているが洋菓子のような特殊なチーズだ。カマンベールの表面にカルヴァドスというブランデーを含ませたパン粉をまぶして熟成させる。洋酒がたっぷり入った洋菓子のような香りがし、カルヴァドスはリンゴ酒(シードル)から作られるので砂糖は使ってなくてもお菓子のような甘さを楽しめる。
4.シュヴロ
フランス 山羊乳 シェーブル
無殺菌の山羊乳から作られたチーズのクセ者感と美味しさにすっかりハマっているが、シュヴロも無殺菌乳を手作業で型入れして作られる伝統的な製法で作られる。真っ白でキメの細かい生地はしっとりとした食感で酸味がしっかり感じられる。熟成が若めだったので表皮と生地との間のトロトロな部分は少なめだった。
5.ブルー・ドーヴェルニュ・オ・レ・クリュ
フランス 牛乳 青カビ
フランス中南部の高地であるオーヴェルニュの名を冠したブルーチーズだ。オ・レ・クリュ(au lait cru)は生乳のという意味で無殺菌乳から伝統的な製法を守って作られていることを表す。ミルクのまろやかな甘みをまず感じ、続いて青カビのピリッとした刺激がやってくる。ほどよい塩加減で、青カビチーズの超優等生的なお味だ。
6.グラナ・パダーノ
イタリア 牛乳 セミハード・ハード
サラダのトッピングにいいコスパ良好チーズの1つとして紹介した。産地が同じで見た目もよく似たパルミジャーノ・レッジャーノと比べると香りの豊潤さ味の濃厚さでは一歩譲るとなるが、香りはまろやかでバターのような分かりやすい美味しさと言い換えることもできる。「キッチンの夫」という呼び名の通りどう食べても美味しい。
7.ポン・レヴェック・レ・クリュ
フランス 牛乳 ウォッシュ
ノルマンディ地方でカマンベール以前から作られていたチーズの1つで四角い形をしている。弾力のある食感と素直なミルクの味を楽しめるチーズで無殺菌乳で作られる物が特に美味しい。ウォッシュといっても香りは穏やかで極めて食べやすい。それでいてミルクのコクを濃厚に感じられるのだからウォッシュチーズ入門に最適。
著者: へた釣り