国粋主義的な思想は持ってないつもりだが、それでも日本人やるじゃん!!ってことがあると少しうれしくもあり誇らしくもある。オリンピックはそんな感じで楽しむ。今回のチーズセットの金メダルは日本のチーズだった。これまで食べた青カビチーズの中でも五指に入るくらい美味しかった。
日本に乳製品作りが伝わったのは飛鳥時代と言われている。蘇と呼ばれる牛乳を煮詰めた物が平安時代まで朝廷に献上されていたが貴族文化の衰退とともに姿を消した。蘇のレシピは残っていない。次に日本で乳製品が登場するのは江戸時代。八代将軍吉宗がインドから白牛を3頭輸入し「白牛酪」という乳製品が作られるようになった。寛政年間には強壮剤や解熱用の薬として一般にも売られるようになったようだ。同じころ、ヨーロッパで唯一の貿易相手であったオランダからゴーダチーズが伝わったようだが、当然庶民の口に入る物ではなかった。日本で酪農が本格的に始まるのは明治以降。チーズ作りが始まったのはさらに遅れて1900年(明治33年)とされている。まだ100年と少ししか歴史がない。
金メダルの獲得数でいうとフランスが圧倒的に一番で、だいぶ離れてイタリアかな。個人的な好みに合うので、3番手はスペインのように思う。スイス、イギリス、ベルギーあたりが団子になってそれを追うって感じかな? 日本のチーズは面白そうな物を見つけたら買うようにしているが、これらの国のチーズとがっぷり四つに組んで戦える物はまだ少ないように思う。
1.アトリエ・ド・フロマージュ・ブルーチーズ
日本(長野県) 牛乳 青カビ
青カビがきれいに広がっており見た目にも美しい。ピリッとした刺激は強めで青カビチーズらしさを味わえる。ホルスタインとジャージーの乳を混ぜて作られた生地は甘みが強くコクもあり、青カビの刺激を緩和してくれる。塩味はマイルドで後味も穏やかだ。日本人の好みに合うように味が組み立てられているように感じる。
2.サント・モール・ド・トゥーレーヌ・ドゥミ・アフィネ
フランス 山羊乳 シェーブル
藁が通った円筒形のチーズ。「ドゥミ・アフィネ」はほどよく熟成させたという意味。表面の木炭と生地の間が少しトロトロになっていた。若い物に感じた酸味はなくなっており、代わりに山羊乳の味が濃縮されクリーミーさが増す。香りも熟成が進むとナッティーになり、チーズの熟成とはこういうことかっ!と驚かせてくれる。
3.カルリーナ
イタリア 牛乳 白カビ
一口食べると牛乳の甘さと美味しさが口の中で爆発し「ミルキ~はママの味~♪」と歌いたくなる系のチーズだ。熟成が進みドロリとした生地はねっとりと歯にくっついてくるような食感で牛乳味のアメを食べているような感覚。甘みが強いが砂糖の甘みではなく牛乳の穏やかな甘みなので食べると優しい気分になれる?
4.ペコリーノ・トスカーノ
イタリア 羊乳 セミハード・ハード
ペコリーノはイタリア語で羊乳で作られたチーズのこと。トスカーノはワインやオリーブの産地として知られるトスカーナ地方のこと。やや白っぽい生地は羊乳らしい甘みと酸味があり、口の中で溶けるのを楽しんでいると、ミルクのコクが少し遅れてやってくる。塩味は以前食べたことのあるペコリーノ・ロマーノに比べると格段に穏やか。
5.カンタル・アントル・ドゥ
フランス 牛乳 セミハード・ハード
2000年以上の歴史があるという40キロ級の大型のチーズで90日以上熟成された物を「アントル・ドゥ」と呼ぶ。乾いた表皮はゴツゴツと武骨な感じだが、生地はナッティで繊細な味わい。口の中でもろく崩れ濃厚なミルクの香りが広がり、苦みを後味に残して溶けて消えて行くチーズらしいチーズだ。赤ワインと合いそうなお味。
6.カレ・ブラッスール
フランス 牛乳 ウォッシュ
カレなので正方形のチーズだ。フランス東部のアルザス地方で作られることが多い。ブラッスールはこの地方で作られるホップの香り豊かな白ビールで表面が洗われたウォッシュチーズだ。表皮の香りは強めだが、表皮を剥げば生地はなめらかな食感でどちらかというと大人しい。ミルクの甘みとコクをしっかりと味わうことができる。
7.マンステール・フェルミエ・オ・レ・クリュ
フランス 牛乳 ウォッシュ
修道院で作られたウォッシュチーズでフランスで最も古いチーズの1つに数えられる。古いウォッシュチーズというと強烈で個性的な香りと味かもと考えがちだが、マンステールに関してはマイルド。しっとり柔らかい生地の濃厚なミルキーさとコクの強さが素晴らしい。クミンをトッピングするという食べ方はマンステールから生まれた。
著者: へた釣り