国産のチーズは市場が小さいため少しでも多くの人に食べてもらえるように万人受けする味にまとまることが多い。例外はもちろんある。そんなチーズに出会えると本当にうれしい。名だたるチーズの中に国産チーズが1つ。ブライドで食べてたら日本のチーズとは気付かないかったかも。
この国産チーズはすごい!!という経験、これまでにも何度かしている。つい最近も初夏の大北海道展で買った香林農園のポンヌプリというシェーブルチーズが軽やかな酸味とねっとりとした食感を楽しめてびっくりした。似たタイプのチーズにフランスのマコネなどがあるが勝るとも劣らない。共同学舎新得農場のさくらの和菓子のような可憐な姿と繊細な味はクセ者ぞろいのフランスチーズに混ざるとかえって強烈な個性を放つ。今回出会えたのが長野県の清水牧場のハードチーズ、バッカスは王道を行く。世界的に名の知れたチーズとがっぷり四つに組んで引けをとらない。
フェルミエ渋谷店の7種のチーズセットはいろんなチーズを食べてみたい入門者には値段も手ごろだし、3回か4回で食べきれる量だし、熟成具合のほどよい物が入っているしで重宝する。毎週買っていると今回は食べたことがないチーズがあまり入ってなかったということも…そんなときそろそろ卒業かな?と思う。でも、自分では絶対に買わなかったであろうバッカスと出会わせてくれたわけで…まだ卒業できない。
1.サン・ネクテール・フェルミエ
フランス 牛乳 セミハード・ハードいろんな色のカビが生えた表皮はお世辞にも美味しそうに見えないので、あまり期待せずに口に運ぶと評価は一転する。ねっとりと濃厚な生地はミルクのおいしさをストレートに楽しめる。ナッティーな香りもしっかり楽しめる。ローマ時代からある、オーヴェルニュ地方の山岳地帯で作られているチーズであるらしい。
2.マオン・メノルカ
スペイン 牛乳 セミハード・ハードパプリカとオリーブオイルを塗りながらゆっくりと熟成されたチーズで濃厚な味わいと香りの強さが特徴だ。ポロポロと口の中で崩れる生地は少し塩が強めだが同時にミルクの甘みがすごく濃厚に感じられる。甘みが消えてもナッティな香りの余韻を残してくれる。「潮風を連想させる風味」ということなので夏の訪れを感じるチーズだ。
3.マロワル・ソルベ
フランス 牛乳 ウォッシュフランス北部のベルギーとの国境近くで千年以上前から作られている修道院製のチーズだ。殺菌乳に赤い酵素を添加して作られる。丁寧に塩水で現れた表皮からは強烈な香りがするようになり、ベタ付いた表皮とこの香りだけで苦手な人は顔をしかめるかも。表皮を剥げば濃厚でミルキーな味わい。少し塩味が強い系かな?
4.ピエール・ロベール
フランス 牛乳 白カビ牛乳に生クリームをたっぷり加えて作られるトリプルクリームという製法で作られた白カビチーズ。乳脂肪分75%なのだからこれが美味くなかろうはずがない(カロリー高いけどね)。バターを舐めているような食感で少し酸味を残して口の中で蕩けて消えてしまう。子供でも分かる美味しさなので食べ過ぎ注意かも。
5.ペルシエ・ド・シェーブル
フランス 山羊乳 青カビ・シェーブルペルシエはパセリの意味で、山羊乳のチーズの白い生地に点々とみじん切りにしたパセリのように広がる青カビが映える。山のチーズを多く産するサヴォワ地方では山羊乳の青カビチーズのことをペルシエと呼んでいたようである。山羊乳チーズらしい香りとコクを楽しんでいると少し遅れて青カビの刺激がやってくるが、青カビの刺激は控えめでむしろ口の中に残る塩味の方が強く感じる。
6.バッカス
日本(長野県) 牛乳 セミハード・ハード野麦峠の近く、標高1400メートル~1800メートルの牧場で育てられたブラウンスイス牛の乳で作られた大型のハードチーズ。10カ月以上熟成され水分がほぼ抜けきっており、生地には牛乳の美味しさが濃縮されている。国産のチーズでは珍しく複雑な香りを楽しむフリュイテさも併せ持つ。これまで食べた日本のハードチーズではNo.1の美味さかも!!
7.モテ シュール フォイユ
フランス 山羊乳 シェーブル栗の葉に包まれたシェーブル。ゆっくり凝固させる白くキメが細かい生地は酸味がやさしく、口の中でねっとりとした食感とクリーミーな味わいを残しながら溶けていく。ミルキーなのにさわやかな後口というなんだか相反する印象を受けるチーズで面白い。熟成が進むと表皮がブルーのカビに包まれるらしいので熟成した物も食べてみたい。
著者: へた釣り